パフォーマ 70 HONMOKU


投稿:2015.07.14
【本牧エリア】 【エンタメ】 【アーティスト・著名人】 【イベント】 【アート】

 

1970年代アートシーンにフォーカスをあて、閉館した映画館を舞台にトーク、シネマ、パフォーマンスの表現ツールを駆使したアートイベント「パフォーマ 70 HONMOKU」

 

 1970年代、高度経済成長期の終焉と二度のオイルショックを迎える喧騒の時代。この時代をアートという武器を用い、ある人は写真で、ある人は言葉で、またある人は自らの肉体を使い、新たな価値観や概念を様々な実験的手法により切り開いてきた。この、「時代の先駆者」たちは現在も各界のレジェンドと呼ばれながら第一線で活躍している。荒木経惟、近田春夫、四谷シモン、鈴木慶一……。

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パフォーマ 70 HONMOKU

 今回ご紹介するのは、そんな1970年代のアートシーンにスポットを当てたイベント「パフォーマ 70 HONMOKU」。横浜・本牧にある旧:マイカル本牧内にあった施設で、2011年に閉館した映画館「MOVIX本牧」を舞台に、竹中直人、近田春夫などの豪華ゲストが繰り広げるトークイベント、荒木経惟や寺山修司らが手がけた映画、そして3人のダンス・演劇・美術/音楽の作家たちによるパフォーマンスと、 会場のパフォーマンスを最大限に活かした構成になっています。このレポートでは、イベントの内容はもちろん、この企画のプロデューサーであり、NPO法人 Offsite Dance Projectの代表を務める「岡崎松恵」さんにインタビューを行いましたので、ぜひご覧ください。

(文章、カメラ:井手悠哉 レポート補佐:マナ)

「パフォーマ 70 HONMOKU」

場所:横浜市中区本牧原14‐1本牧6番街2F HONMOKU AREA-2(旧マイカル本牧の映画館跡)
開催期間:2015年7月31日〜8月2日
イベント詳細URL:http://performa70.yokohama/

 

 

 

「パフォーマ 70 HONMOKU」とは?

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 パフォーマ 70 HONMOKU

 さまざまなジャンルの表現者が大胆に交流しながら、芸術を根源から問い直そうとした70年代。美術、建築、演劇、舞踊、デザイン、写真、音楽、漫画、既存 の表現を疑い、原点を探るような試みが行われました。ダンスでは舞踏の勃興に加え、ポストモダンの影響下で多様な身体の実験が行われ、コンテンポラリーダンスの今に繋がっています。

 本企画は、70年代の前衛的ムーブメントを振り返るとともに、その実験精神が現代芸術にどのように更新されているのかを探る試みです。 その時代の体現者である榎本了壱氏の監修のもと、地元で活躍する映画・音楽のプロデューサーともコラボして、各界のレジェンドたちからコンテンポラリーの旗手が集い、トーク/映画上映/パフォーマンス/パーティを展開します。
(公式ホームページから抜粋)

 

主な出演者・出展者

厚木凡人 /荒木経惟 / 宇野亞喜良 / 梅田哲也 / 榎本了壱 / 川崎徹 / 國吉和子 / 黒沢美香 / 桑原茂→ / 篠田千明 / 十文字美信 / 鈴木慶一 / 竹中直人 / 近田春夫 / 寺山修司 / 萩原朔美 / アレハンドロ・ホドロフスキー / 松本俊夫 / 山口はるみ / 四谷シモン / 大貫憲章

 

公演案内

 

TALK 【アートーク レジェンド70】

【イラストレーションがアートを超えた日/山口はるみ・宇野亞喜良】 7月31日(金)14:00開演
【TVコマーシャルにチャンネルを合わせた/十文字美信・川崎徹】 7月31日(金)17:00開演
【ポストモダンダンスの時代/厚木凡人・國吉和子】 8月1日(土)14:00開演
【ハルヲフォンとスネークマンショー/近田春夫・桑原茂→】 8月1日(土)17:00開演
【状況劇場と天井棧敷/四谷シモン・萩原朔美】 8月2日(日)14:00開演
【ムーンライダーズと燃えよタマゴン/鈴木慶一・竹中直人】 8月2日(日)17:00開演

総合司会=榎本了壱(クリエイティブディレクター)
料金◆各回 一般 前売1,300円/当日1,500円|学生・シニア 前売1,000円/当日1,200円 * 1 drinkつき
会場:シアター2(3F)

PERFORMANCE【3パフォーマ】

Aプロ:篠田千明「The 5×5 Legged Stool ‒ 四つの機劇より」7月31日(金)20:00開演
Bプロ:黒沢美香「ロマンチックナイト in 本牧」 8月1日(土)19:00開演
Cプロ:梅田哲也「シネコンに亡霊をよぶ」8月2日(日)19:00開演

料金◆A/C 前売2000円/当日2500円 B 前売2500円/当日3000円 *学生500円引き
会場:シアター8(5F)

PARTY

【大貫憲章 in YOKOHAMA 70’sスペシャル】
8月1日(土)20:00-24:00|料金◆前売2000円/当日2500円 *別途1ドリンク代
会場:ホワイエ(3F)

CINEMA◆シアター1(3F)

7月31日(金)ー8月2日(日)
料金◆各回1000円
学生・シニア 800円

【荒木経惟 アラキネマ特集】
【Aプロ】 7月31日(金)16:00~/8月1日(土)19:00~
去年ノ夏(05)/花秋(04)/冬春(04)
【Bプロ】7月31日(金)19:00~/8月2日(日)16:00~
67↙天才ノ反撃(05)/7月(06)/遺作 空2(09)
【Cプロ】 8月1日(土)16:00~/8月2日(日)19:00~
青ノ時代(05)/緊縛色淫(06)/愛ノ花(07)
*R-18+(18歳以上の方に限られます)

【70年代映画特集】
松本俊夫【薔薇の葬列】

【Dプロ】 7月31日(金)13:30〜15:20/8月1日(土)11:45〜13:35/8月2日(日)20:15~22:05

寺山修司【トマトケチャップ皇帝】
【Eプロ】 7月31日(金)11:45〜13:00/8月1日(土)14:00〜15:15/8月2日(日)11:45~13:00

アレハンドロ・ホドロフスキー【エル・トポ】
【Fプロ】 7月31日(金)20:25~22:30/8月2日(日)13:30〜15:35


 

お問合せ
NPO法人Offsite Dance Project
Tel. 090-6346-5820
E-mail: info@offsite-dance.jp

 

HONMOKU AREA-2 (旧:マイカル本牧の映画館跡地)

 今回のイベントの舞台となるHONMOKU AREA-2 (旧:マイカル本牧の映画館跡地)とは、2011年に閉館した「MOVIX本牧」のことで、横浜・本牧地区にあるスペイン風のデザインが特徴的な大型のショッピングモールの一角にあります。

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▲本牧の中心部(旧マイカル本牧)

 

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▲今回のイベントの舞台となるHONMOKU AREA-2 (旧:マイカル本牧の映画館跡地)がある建物。

 

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▲HONMOKU AREA-2 (旧:マイカル本牧の映画館跡地)の内観。スクリーンと座席はなくなっているが、その他は閉館前と変わらぬ姿で保存されている。 今回のイベントでどのように変化するのか楽しみだ。

 

プロデューサー 岡崎 松恵さんインタビュー

「パフォーマ 70 HONMOKU」のプロデューサーであり、様々な地域や立場の人たちと関わりながら、ダンスと社会をつなぐ「NPO法人 Offsite Dance Project」(オフサイト・ダンスプロジェクト)の代表でもある岡崎 松恵さんに今回のイベントの内容だけではなく、舞台芸術の世界に興味をもったきっかけや、これまでの活動についてなどをお聞きしました。

 

パフォーマ 70 HONMOKU

▲「パフォーマ 70 HONMOKU」プロデューサー・岡崎 松恵さん

プロフィール
1987年に横浜市がオープンした小劇場「STスポット」の館長を開館当時から2004年1月まで務め、さらに2006年3月まで「BankART 1929」の館長に就任する。2008年、舞台芸術の企画制作を手がける「NPO法人 Offsite Dance Project」を立ち上げる。

 

Q:舞台芸術の世界に興味をもったキッカケを教えてください。

「小さい頃からクラシックバレエや絵画に興味を持っていたのですが浪人時代に友人が大学で始めた演劇やダンスを見たのがきっかけで、 自分も大学に入ったら何かやろうと思い舞台に関わるようになりました。最初は出演する方だったのですが下手だったので (笑)、自分の役割としてプロデュースや演出側になりました」

 

Q:卒業後も舞台の仕事に就こうと思っていたのですか?

「卒業後は広告代理店で働く傍ら、友人の演劇やダンスの公演の制作をしていました。それで4年くらいたった時に、大学の演劇部時代の友人から、今度横浜駅に小ホール「STスポット」ができるんだけど一緒にやらないかと誘われたんです。実際に見学しにいくとシアターは約56㎡のとても小さな空間で、学生時代にこのスペースがあったら絶対使ったなと思ったんですよ。当時からいわゆるプロセニアム(観客席と舞台が画然と区切られた構造)の劇場に全く興味がなくて、ライブハウスや大学のラウンジで演劇公演を行ってたので、この場所だったらおそらく学生もきっと使うだろうなと思ったんです。劇場運営はまったくの素人だったのですが、そこに訪れた若手劇団の子たちが色々と教えてくれました。こういう機材があったらいいとか、こういうふうに改築したらいいとか、みんなでペンキを塗ったり、彼らのアイデアを企画にしたりして。本当に地元の若い演劇の若者たちと一緒に「小劇場」を作っていったっていう感じでした。つまり劇場の機構や基本設備がなくても、ゼロから人の力でつくり上げるんだっていうのが自分の劇場運営の体験としてある。当時STスポットで活動していたアーティストの卵たちがその後日本の演劇界やダンス界で活躍していて、そのときのネットワークは未だに生きてますね」

 

Q:劇場運営を行っていてワクワクする瞬間はどのようなときでしたか?

「STスポットは公設民営ですから、なるべく安く、みんなが使いやすいようにと考えていたので、いろんな方たちが来るわけですね。当時は無名のアーティストの作品ばかりだから、それはクオリティで言ったら厳しいものもあるんですけど、その中にわけのわからないエネルギーを持っている作品があるんですよね。あるいは、これまでの概念や価値観を変えるような新しい表現が出てくるときがある。そういう新しい作品や才能に会うというのはとても刺激的なことだと思います」

 

Q:NPO法人「Offsite Dance Project」をはじめたきかっけは?

「私は16年STスポットにいて、その後に横浜にあるアート施設『BankART 1929』に2年ほどいました。そこを辞めて2年間完全に休み、自分の進路ややるべきことを探した結果、NPO法人『Offsite Dance Project』を始めました。Offsiteというのは“日常の場を離れて”という意味があるんですね。私達の舞台芸術の日常はまさに劇場にあるわけなんです。そこを離れてということで、劇場以外の様々な場所を舞台にしていこうって考えました。「BankART 1929」にいた時に、街を舞台としたパフォーマンスプロジェクト『横浜ダンス界隈』で街のいたるところに面白さを見つけたし、観客が一緒に劇場環境を作っていくプロセスを体験したのが活きています」

 

Q:今回本牧でイベントを行おうとしたのは何故ですか?

「私はそれまで関内地区で主に活動していました。理由としては、横浜市のアートを活用した施策「文化芸術創造都市構想」というのがあり、このエリア 内の芸術環境が恵まれているからなんです。でも5年くらい前に日吉から山手に引っ越してきて生活エリアが変わり、この本牧の方まで買い物にくる機会が増えました。もともと通っていた高校、大学が山手周辺だったこともあり、本牧が米軍に接収されていた時代、マイカル本牧が誕生した時代など街の移り変わりを知っていたのですが、久しぶりに来てみるとかつての賑わいが薄れ、空き店舗が目立っていてびっくりしました。(笑)、でも同時に今まで気づかなかったこの街の特徴にも気付いたんです。先ほどお話した、横浜ダンス界隈から街を見る目が少し変わっているのかもしれないけれども、道が広くて空がひらけてるだけでもそれは素敵だなって思うんです。また、本牧が様々な歴史を経たからこそ持っている特有のものがすごくあって。たとえばアメリカ的なお店もあれば、埋め立てられた工場地帯とか、米軍ベースキャンプがあったからこその広大な公園とか。やはり歴史を感じながら見る風景って奥深さがあるなって思ったんですね。本牧にこだわりを持つ個性ある住民の人たちも多くて、本牧の街の環境、景観、そこに住む人々そのものが大きな資産だと思ったんです。ここ(本牧)は「文化芸術創造都市構想」の施策がカバーしていないエリアで、ここにはギャラリーも アートの施設もまったくないので、私はこれまでの自分のネットワークや経験を用いて何かできることがあるかもしれないと。それで2年前、2013年に『本牧アートプロジェクト2013』を行いました。
 本牧アートプロジェクト2013はこの街の景観と音楽文化にフォーカスしたものです。ただ、このときにプログラムごとに地元でも客層が異なり、各コミュニティの個別性が強く、なかなか入り混じらないということを痛感しました。それで去年2回目の『本牧アートプロジェクト2014』にあたって、世代を越えて集まりたい場所はどこかをリサーチしたところ、映画館がいいと。すでに閉鎖されていたのですが、オーナーが「株式会社エスタディオホールディングス」であることが判り、交渉の末、「本牧アートプロジェクト2014」のときに3日間だけ開けてもらいました」

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▲本牧アートプロジェクト2014の様子(撮影:森日出夫・amano studio)

 

「四年半閉じていましたけど、綺麗だったんです。とっても。ただ問題は客席とスクリーンが取り外されていて、階段式フロアーの大きなシアター以外は、床が斜面であるということなんですね。 ただ私たちプロフェッショナルから考えればそれはそれで非常に面白いと思いました。そしていざここをオープンすると街の人たちの反応がすごかったんですね。“今日映画館が開いてる!”と。閉館後のありのままの状況の中で、そこに簡易な照明・音響・映像、身体を用いてイベントを行ったのをオーナー企業の担当者関係者がご覧になって、今後本牧地区のコミュニティ施設として開いていきたいというお話もあり、映画館跡地の再生計画がスタートしました」

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 ▲HONMOKU AREA-2(旧:マイカル本牧の映画館跡地)

 

Q:舞台となる映画館跡地が「HONMOKU AREA-2」と命名されているのですが?

「米軍に接収されていた頃この辺りはエリア2と呼ばれていて、この映画館のあった場所にはかつてアメリカンハイスクールがあったそうです。本牧の街を語るときに米軍時代を語らずにはいられないわけですよ。そういう意味でAREA­2と名付けることで本牧という街がどういう街だったのかということを伝えたいと思い、『HONMOKU AREA­-2』と名づけました」

 

Q:今回なぜ70年代にスポットをあてたのでしょうか。

「この企画は横浜市の3年に一度のダンスのアートフェスティバル“Dance Dance Dance @ Yokohama 2015”の一環なんですが、夏に赤レンガ倉庫で開催される70年代のロック音楽をテーマにした展覧会「70sバイブレーション」の関係者から連携して何かできませんかと言われたんですね。私は改めて70年代のダンスはどうだったんだろうと考えたわけです。当時のダンス関係者に聞くと、コンテンポラリーダンスに繋がる分岐点だったと。私達は70年代ダンスシーンになにが起きたか知ることもできないんですね。映像もないし、記録もない。ニューヨークにいる友だちに聞くと、70年代のダンス作品の再演を見ることもできるし、様々な記録の中から現代の身体表現を見つけ出そうとしてきたと。70年代をいろいろ調べてみると、ジャンルを越えてアーティスト同士が協働して新たな表現を模索しようと、既存の劇場や美術館を飛び出してまさにオフサイトしていたので、映画館の再起動に相応しいテーマだと思いました。また、HONMOKU AREA-2のこけら落としにもなるので、70年代のアートシーンに熟知しているアートディレクターの榎本了壱さんを監修に、地元横浜の映画と音楽シーンを牽引するシネマ・ジャック&ベティやベイサイド ヨコハマにも企画に入ってもらって、70年代のエポックとなった人々やコンテンポラリーまで華やかなラインナップになっています。半券キャッシュバックもあるので、いろいろなプログラムをハシゴして見てもらえるといいなと思っています」

 

Q:今後について教えて下さい。

「『Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2015』の主催事業で10月10日〜12日、森山未來さんの舞台をここHONMOKU AREA-2で行います。そして3回目となる本牧アートプロジェ クトを12月12,13日に行う予定です。また、8つもシアターがありますので、私としてはぜひクラウドファンディングでひとつのシアターに椅子とスクリーンを設置したいと思っています。現時点で、HONMOKU AREA-2には何にもないんです。だからSTスポットの時もそうなんですけど、横浜の芸術文化を担っていく若い人たちが行動を踏み出す場所になれば良いって思っています。本当に関わる余地が多い。掃除の人手も座布団も必要。どのような形でもいいので、本牧の街の人たちも主体的に関わって、世代を越えて多くの人たちが気軽に集まれる場所になればいいなって思っています」

 

——ありがとうございました。

 

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