本牧アートプロジェクト2015


投稿:2015.12.01

 

街がアートと一体になる2日間、今年で三回目を迎える『本牧アートプロジェクト2015』

  前回レポートした「パフォーマ70」の舞台になった横浜市中区本牧。この地で、今年で3回目の開催となる『本牧アートプロジェクト2015』が12月12日、13日に行われます。
『本牧アートプロジェクト2015』とは、前回のレポートでもお伝えしたように独自の文化を持つ街・本牧にさまざまなアーティストやクリエイターたちが集い、インスタレーションやパフォーマンスを展開するイベントです。

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photo by Hideo Mori

 各アーティストが独自の視点で描き出したアートを街にちりばめ、参加者が街を歩きそのアートに触れることで新たな発見や人々の繋がりが生まれていく……。そんな期待が込められたこのイベント。
 今回は初の試みとなる一般公募によって選出されたアーティストが本牧に滞在しながら作品を創出するなど、より街と密着したものになっているそうです。前回はアーティストとして参加し、今回はプログラムディレクターを務める「藤原ちから」さんに、ご自身へのインタビューやイベントの概要や見どころなどをインタビューして来ましたのでぜひご覧ください。

(文章・撮影:井手悠哉、マナ)

 

「本牧アートプロジェクト2015」

場所:横浜市中区本牧周辺
開催期間:12月12、13日
イベント詳細URL:http://honmoku-art.jp/2015/

 

『本牧アートプロジェクト2015』とは?

『本牧アートプロジェクト2015』は、独自の文化を育んできた横浜・本牧エリア一帯を舞台としたプロジェクトです。
 戦後から37年間米軍のベースキャンプがあった頃、そしてベース跡地に大型複合ショッピングセンター「マイカル本牧」が注目を集めた90年代。多くの人々が強烈な記憶を今も抱き続けている本牧で、多様なアートを通して新たな街の記憶を創り出す試みです。
 3回目となる『本牧アートプロジェクト2015』は、演劇を軸に国内外で活躍する編集者・批評家、藤原ちからをプログラムディレクターに迎え、「対話し、 遊べる《島》をつくる」をテーマに、国内外の多分野のアーティストが参加し、本牧の街の多様性・多層性を可視化することを試みます。
(公式ホームページから抜粋)

 

公演案内

『本牧アートプロジェクト2015』は大きな3つのプログラムに分かれています。

A)複数の演目を楽しめる1日ごとの「パスポートプログラム」

B)ワワフラミンゴ『本牧げんかん』

C)すべての演目を巡るスペシャルバスツアー『ラクラク本牧旅行』

 

A)パスポートプログラム

日程:12月12日(土)・13日(日)
*一部、日替わりプログラムあり。
料金:各日3,500円(本牧割引2,500円)
集合場所:HONMOKU AREA-2 総合受付

①JKアニコチェ & 多田淳之介『GOVERNMENT』
②石神夏希『ギブ・ミー・チョコレート!』
③武田 力『踊り念仏』
④内木里美『こどもディスコ』
⑤テラミチ健一朗『メリーゴーランドがやってきた!』

B)ワワフラミンゴ『本牧げんかん』

日程:
12月12日(土)15:00/16:30
12月13日(日)12:00/14:00/16:00
料金:1,500円
(各回20名限定 *お茶菓子つき)
会場:豆松カフェ

C)スペシャルバスツアー『ラクラク本牧旅行』

日程:12月12日(土)11:00出発〜16:00解散
料金:7,500円(50名限定)
集合場所:JR「桜木町駅」ターミナル

各プログラムのタイムテーブル等は公式ホームページをご覧ください。
http://honmoku-art.jp/2015/pc.html#01program

チケット取扱

〈ローソンチケット〉
1日パスポート:L34630
ワワフラミンゴ:L34631
バスツアー  :L34632
WEB http://l-tike.com/honmoku-ap2015/

電話 0570-000-407(オペレーター 10-20時)
ローソン・ミニストップ店頭Loppi

〈本牧割引チケット〉

1日パスポート:2,500円
(本牧に在住・在勤の方、山手駅及び根岸駅の定期券お持ちの方)
本牧アートプロジェクト2015事務局までメールにてご予約ください。
E-mail: info@honmoku-art.jp

 

プログラムディレクター 「藤原ちから」さん インタビュー

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▲『本牧アートプロジェクト2015』プログラムディレクター・藤原ちからさん

プロフィール
1977年高知市生まれ、横浜在住。編集者、批評家、フリーランサー。BricolaQ主宰。12歳で単身上京し、東京で一人暮らしを始める。以後転々とし、出版社勤務の後、フリーに。雑誌「エクス・ポ」、武蔵野美術大学広報誌「mauleaf」、世田谷パブリックシアター「キャロマグ」などの編集を担当。演劇批評を中心に様々な記事を執筆。辻本力との共編著に『〈建築〉としてのブックガイド』(明月堂書店)。徳永京子との共著に『演劇最強論』(飛鳥新社)。演劇センターF創設メンバー。本牧アートプロジェクト2015プログラムディレクター。APAFアートキャンプ2015キャプテン。遊歩型ツアープロジェクト『演劇クエスト』を、横浜を中心に、城崎温泉、マニラ、デュッセルドルフなど各地で創作中。
BricolaQホームページより抜粋

 

Q: 今回プログラムディレクターとして参加したキッカケを教えてください。「去年僕はこのイベントにアーティストとして参加していて「演劇クエスト」という街を回遊する一種のツアー型の作品を制作したのですが、そこで街の人たちとの関係ができたこともあり、プロデューサーの岡崎松恵さんからプログラムディレクターをやってみないかと打診されました」

 

Q:演劇クエストとはどのようなものでしょうか?
「ある種の台本のような「冒険の書」を片手に、フィールドを自由に移動する遊歩型ツアーパフォーマンスです。本の中に選択肢があって、参加者が進みたい番号を選んでそこに歩いて行くとそこにまた選択肢が現れて……。ということを繰り返します。
 別の場所で演劇クエスト第一回目をやったときに、こちらでいろいろ計算をして、だいたい何時くらいにここに来るだろうとか想定をしていたんですが、参加者の動きが僕の予想を全く超えてきて良い意味で裏切られたのでそれが面白かったんですね。
 だから去年、本牧でやった時は『観客に委ねる』ことをテーマにしました。自由度もかなり高くして、ゴール、いわゆるここが終わりというものを作らずに、本牧は夕日が綺麗なので夕日を見たら終わりとしたんです。ツイッターでハッシュタグを付けて追えるようにしたので、タイムラインを見るといろんな夕日が見られました」

 

Q:終着点が人によって違うと?
「そうですね。参加者にそのときに辿った経路をあとでメールしてもらいウェブ(http://engekiquest.blogspot.jp/)に載せたんですよ。そうしたら、かなりの数の方が送ってくれてそれも楽しかったです

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▲「演劇クエスト」で使用された「冒険の書」(作者撮影)

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▲英語バージョンも

 

Q:どのように「演劇クエスト」を構築するのでしょうか。
「本牧編の時はまさに手探りの状態だったので、バスの一日乗車券を買ってひたすら探索することを何十回も繰り返しました。
 今も試行錯誤しているんですけど、プロセスとしては、まずその土地を先入観なく歩いてみます。たとえ下調べをしたとしても、やっぱり行ってみないとわからないことが多いので。歩いてみて、初めて情報が血肉化というか身体化される。ひたすら歩いて、バスのようにローカルな交通機関、いわばそこに住んでいる人たちの生活の動脈を使って体感し、そこで得られた情報をどう繋げて編集していくかを考えていきます。つまり、最初から枠を決めてやるんじゃなくて、とにかく地を這うように歩いてみる。効率は悪いのかもしれないけど、そういうやり方が自分の性には合ってるんでしょうね。まあ今年の本牧アートプロジェクトでは『演劇クエスト』はやらないんですけど(笑)、情報はここ(http://bricolaq.com/)にあるので、またどこかでやる時にはぜひ体験していただければと思っています」

 

Q:『本牧アートプロジェクト2015』についてですが、今年は一般公募で選ばれたアーティストの方がいらっしゃるそうですね。
「そうですね、岡崎さんと相談して公募企画を考案しました。一般公募で選ばれたアーティストに、本牧の街に一定期間滞在してもらい、そこから作品を創造してもらうというものなんですが、街の方の意見なども聞きながら最終的にはダンサーの内木里美さんに決定しました。内木さんを選んだ理由として街と何かをやってくれそうだなという気配があったんです。応募時の文章も『本牧は初めてだったので、まず美容院に行くことにした』って書いてあったんですよ。いきなり髪を切ったっていうのがちょっと面白くて。実際にお会いしてみてもすごくオープンな性格の方で、言い方が適当か分かりませんが、この人を野に放ってみたら面白そうだなって思いました(笑)」

 

Q:内木さんは現在も本牧にいらっしゃるのですか?
「こちらから提示した条件としては11月からの滞在でもよかったんですけど、10月半ばにはもう本牧に来ていました。現在は本牧でホームステイをしています。内木さんの場合もそうですが、ディレクターとして、こうしてほしいという意図はある程度アーティストに最初に伝えますが、それを受けて何をやるかは、できるだけアーティストそれぞれに任せたいと思っています。もちろん相談されたら一緒に考えますし、最終責任はディレクターとしての僕にあると思っているんですが、それぞれどういう作品をつくるかはできるだけコントロールしたくないなと。先ほどの「観客に委ねる」のと似ているんですけど、自分の想像力を超えてくるもののほうが面白いと思っているので」

 

Q:他のアーティストはどのように選出されたのですか?
「基本的に僕が選出したのですが、全体としてどういうディレクションをしたかというと、まず知名度に頼らないことにしました。例えば、本牧の立ち飲み屋で「小田和正、誰だそれ?」みたいな話をふと耳にして、もうそうなると、知名度に頼ることに何の意味があるのだろうかと。
 今は興味の多様化が進んでいて、テレビも見ない人もいるわけですよね、ネットだけとか。そうすると自分でアンテナを張っている部分はよく知っていても、どうしても偏りが出る。例えば演劇系だと多田淳之介さんは韓国でも大きな演劇賞を獲っているけど、演劇に触れたことのない人はたぶん知らないですよね。あるいは蜷川幸雄が灰皿を投げることは知っていても、舞台を観たことはないかもしれない。そういう世界に生きている以上、知名度に頼って集客する、という体質それ自体を変えていかなくちゃいけないんじゃないか。
 それに芸能人とか、ある程度有名な人を連れてきたら、確かに遠方からもファンは来るかもしれないけど、その演目だけ観てすぐに帰っていくだけだとしたら、この本牧という土地でアートプロジェクトをやる意味はないんじゃないかと思ったんです。だから、少なくとも本牧にいくらかでも滞留して、この街とどういう関係をとるのかを考えてくれるアーティストに声をかけました。それが今回のラインナップです。街との向き合い方は人それぞれですけども」

 

Q:今後の展望について教えてください。
「僕は『本牧アートプロジェクト』一年目は関わっておらず、二年目からアーティストとして関わって、三年目の今年をディレクターとして迎えることになりました。いわば去年から街の人たちと話す機会が増えたのですが、実感として、本牧という地域にこのアートイベントが根付いているとはまだ言えない状況だと感じています。『何かやっているみたいだけど、知らないうちに終わっていた』というような話を聞いたり。それは運営側の広報不足の問題もあるんですけど、もっと根深い、アートというものに対する不信感のようなものがあるのかもしれない。そこでたとえば、アーティストの言葉を、アートに日常的に馴染みがあるわけではない、その地域の人々の興味関心に合わせて翻訳できるような人が必要ではないかと思うようになりました。僕は『アートトランスレーター』と呼んでいるんですけど。そういう人が、もっと現れてくれたらいいなと思います。そしていずれ刺激を受けた若い人たちが、じゃあ今度は自分たちで何かをやろうという気持ちになってくれたらいいなと思っています。自分は横浜には住んでいるけど、どんなに足繁く通っても、結局は外様の人間です。外から何かを持ってくることはできるけど、街のことを考えていくのは最終的には住んでいる人たちだと思う」

 

『本牧アートプロジェクト2015』みどころ紹介

 ここからは藤原さんの解説とともに、『本牧アートプロジェクト2015』の見どころをご紹介します。

 

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①JKアニコチェ & 多田淳之介『GOVERNMENT』

日時:12月12日(土)17:30/12月13日(日)13:00
会場:HONMOKU AREA-2
※上演時間:90分を予定

 

——藤原さんコメント
「フィリピンと日本のアーティストのコラボを行います。多田淳之介さんは日韓で活動をされている方ですが、セリフや役が普通にあるような演劇だけではなく、まず人を集めて、共通の議題について話し合ったりするような演劇作品をつくったりもしている人です。
 フィリピンから招聘するアーティスト、JKアニコチェは、まだ29歳と若いのですがすでにマニラの若いアーティストたちの兄貴分的な存在になっています。おそらく近い将来、アジアを背負って立つリーダーのひとりになっていくでしょう。二人とも、積極的に、ふつうにこの世界に生きる人たちに演劇を届けようとしています。きっとこの二人の間で通じるものがあるから、引き合わせたいなと思ってコラボレーションお願いしました。
 ただ世界各地を飛び回っている多忙な二人が合流できる期間は今回、四日間しかなくて。非常に短い時間しかありません。どうなるんでしょうかね……。でもそれならそれで、ファースト・コンタクトで何ができるかを見届けたいと思っています。きっと、今のこの世の中について何かを感じている人には響くものになるはず。ぜひ来てください」

 

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photo by Hideo Mori

②石神夏希『ギブ・ミー・チョコレート!』

日時:12月12日(土)・12月13日(日)13:00-17:00
会場:本牧エリア一帯(集合場所:HONMOKU AREA-2)
※ 参加受付:16:00までに受付をお済ませ下さい。
※ 開催時間内は、ご自身で自由に開始・終了していただきます。歩きやすい靴でご参加下さい。

——藤原さんコメント
「今、絶賛創作中なのですが、街の中にとある《秘密結社》をつくっているようですよ……(笑)。ある指示に従っていくと何かが起きる……というプログラムです。
 お子さんも親御さんと一緒に楽しめるでしょう。本牧をよく知らない人はもちろん、本牧に住んでいる人にも、いつもとは違う街が見えると思います」

 

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photo by Hideo Mori

③武田 力『踊り念仏』 *12月12日のみ

日時:12月12日(土)ACT1 13:00/ACT2 16:00
会場:本牧地区センター及び周辺(集合場所:HONMOKU AREA-2)

——藤原さんコメント
「ある「指示」に従うことで、街の中を「異物」になって歩くということをします。この世界にはりめぐらされている様々な境界線の「際(きわ)」を歩くようなことになるのではないでしょうか。今回は12月5日に、やはり「指示」を受けながら銭湯に行ってみるプレワークショップを行い、その参加者たちと一緒に12日の本番でも「踊り」ます。詳しくはウェブサイト(http://honmoku-art.jp/2015/)の「WORKSHOP」をご覧ください」

 

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④テラミチ健一朗『メリーゴーランドがやってきた!』

日時:12月12日(土)11:00-20:00・13日(日)11:00-18:00
会場:本牧せせらぎ公園
参加費:無料

——藤原さんコメント
「メリーゴーランドは第一回の本牧アートプロジェクトから登場していますが、街なかに突如として現れるだけで、非日常の空間を生み出してくれます。今回は1日パスポートを買った人が優先的に乗れることになっていますが、無料で見たり乗ったりできるのでお気軽にお楽しみください」

 

 

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⑤内木里美『こどもディスコ』 *12月13日のみ

日時:12月13日(日)15:00
会場:HONMOKU AREA-2
参加費:こども無料、大人300円

——藤原さんコメント
「内木里美さんはこの2ヶ月、本牧に住み込んでたくさんの人たちに会って話をし、独特のアプローチを続けています。「ディスコ」という名の通りDJの曲に合わせて踊るイベントですが、ワークショップで特訓した可愛いキッズダンサーたちがステップを教えてくれるので、踊るのが苦手な子も安心して来てください。シャイなあなたは遠巻きに見てるだけでもいいですよ! 子供が主役のイベントですけど、大人も大歓迎。世代を超えた時空間が生まれたらいいなと思ってます。1日パスがなくても、これ単体で入場可能です。(こども無料、大人300円)」

 

 

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photo by Hideo Mori

⑥ワワフラミンゴ『本牧げんかん』

日程:
12月12日(土)15:00/16:30
12月13日(日)12:00/14:00/16:00
料金:1,500円(各回20名限定 *お茶菓子つき)
会場:豆松カフェ

——藤原さんコメント
「ワワフラミンゴは人気急上昇中の劇団です。
築八十年の古民家カフェで上演するのですが、来年建物が取り壊されてしまうので、この場所でやる最初で最後の演劇になるかもしれません。演劇といってもシュールな漫画のような雰囲気で、20~30分くらいの短編なので、演劇を普段観ない人でも気楽に見ていただけると思っています。新感覚の演劇です。小さな会場なので、ご予約くださいね」

 

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photo by Hideo Mori

⑦スペシャルバスツアー『ラクラク本牧旅行』

日程:12月12日(土)11:00出発〜16:00解散
料金:7,500円(50名限定)
集合場所:JR「桜木町駅」ターミナル

バスガイド:北川麗、小泉まき、斎藤淳子/フードコーディネート:さわのめぐみ
協力:中野成樹+フランケンズ

※代金には、1日パスポート料金・ワワフラミンゴ公演チケット代・飲食代を含みます。
※会場間の移動に用いるバスへの乗車料金はかかりません。

——藤原さんコメント
「3人の素敵な女優さんがバスガイドに扮して本牧アートプロジェクトを案内するスペシャルバスツアー。本牧の土地勘がない人でもラクラクいろいろ観られて、しかも美味しいランチ付きです。実はなかなか入れない秘密の場所もありますし、劇的で、超スペシャルな体験ができると思っていただければと。1台しかない貸切バスなので、ご予約はどうぞお早めに!」

 

———ありがとうございました。

 


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