ヘアメイクアップアーティスト『寺本 剛』


投稿:2009.10.10
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スタイリングがよくても、髪そのものが健康でいきいきしていなければ意味がない。僕は根本的に美しい髪をつくる手助けがしたいんです。

ヘアメイクアップアーティスト 寺本 剛ヘアメイクアップアーティスト 寺本 剛

「頭皮と顔は一枚皮」という独自の美髪美肌理論を提唱し、サロンワークから海外CM出演、さらに著書出版と多方面で活躍している世界的メイクアップアーティスト寺本 剛。
 もともときめ細やかなサロンワークに定評があった彼が、自身の活動の幅を飛躍的に広げるきっかけとなったのは、2006年の『花王アジエンス』海外CM出演である(翌年以降も同CMシリーズには毎年出演)。さらに2007年には著書『美髪ヘアサプリ 』(講談社)を発表。同書では美容業界で注目されていた『頭皮ケア』を一般人向けにわかりやすく解説し反響を呼ぶ。
 以後、彼の名前は世界的なものになり、日々のサロンワークをこなしつつ、雑誌やCMの撮影に立ち会う傍ら、EXILE、COLORといった大物アーティストのヘアメイクなども手がけ、さらにイベントや講演、テレビ、ラジオなどに参加・出演し、時間を惜しまず精力的な活動を展開している。
 また2008年秋には寺本氏プロデュースにより、自身が提唱する「頭皮と顔は一枚皮」のイメージを見事に商品化。ブランド名を『KAMIKESHO / 髪化粧』とし、頭皮洗浄をコントロールしつつ、美しく清潔で健康的な頭皮と髪をつくりあげる効果をサポートする『プレシャンプー』が注目を集めている。

ヘアメイクアップアーティスト 寺本 剛・

(画像は公式ホームページより抜粋)

 そこで今回のインタビューでは、多方面に渡る仕事をこなし、多忙な日々をおくっている寺本氏がヘアメイクアップアーティストになった直接のきっかけをはじめ、印象に残っている出来事や、自身が「原点」と呼ぶ「サロンワーク」へのこだわりなどを詳しく語ってもらい、彼の人間像に迫ってみた。
 インタビューの中で「今後の目標は?」という質問に対し、「様々な活動はしてるものの、やはり自分の原点はサロンワークにあります」とした上で、「僕のもとに足を運んでくださる身近なお客様達を今まで以上に大切にすること。それが当面の目標です」と笑顔で語ってくれた寺本氏。
 きっと世界の大舞台を経験している彼が掲げる目標にしては「身近なお客様を……」はあまりにも謙虚に聞こえるかもしれない。しかし彼はそのことを、どんなに大きな舞台よりも真っ先に、そして本気で考えている。
(取材・文:松田秀人)

寺本 剛

UEL:http://www.isometic.com/

 

 寺本 剛 プロフィール

ヘアメイクアップアーティスト 寺本 剛

(画像は公式ホームページより抜粋)

 独自の美髪美肌理論を提唱し、日本人ではじめて『花王アジエンス』海外CMに出演するなど、世界的に活躍しているヘアメイクアップアーティスト。2007年には講談社より『美髪ヘアサプリ』を出版し、「頭皮と顔は一枚皮」という考え方を一般向けにわかりやすく解説する。
 また、質の高いヘアメイク技術でサロンワークをこなす傍ら、雑誌、CM、タレントヘアメイクなど多方面で活躍する一方、一般向けヘアメイク講座をNHK文化センターをはじめ各地で開催。特に「頭皮ケア」に関する内容は大きな反響を呼んだ。
 さらに2008年10月、自身プロデュースによるブランド『KAMIKESHO / 髪化粧』を立ち上げる。中でも今までの常識を覆す完璧な「美髪美肌理論」に基づいて開発された、頭皮洗浄をコントロールし、美しく清潔で健康的な頭皮と髪をつくりあげる効果をサポートする『プレシャンプー』が注目を集めている。

近年の主な活動内容

2005年12月 NHKラジオ深夜便出演
2006年4月 NHKスタイリング講座開催
2006年8月 『花王アジエンス』TVCM出演
2007年2月 著書『美髪ヘアサプリ / 講談社』出版
2007年3月 TBS『2時っチャオ!』出演
2007年3月 ニッポン放送ラジオ出演
2007年4月 ミルボン主催『アジアトレンドセミナー』開催
2007年5月 『花王アジエンス』TVCM第2弾出演
2008年5月 サンプルラボで約700人にメイク講座開催
2008年9月 『花王アジエンス』TVCM第3弾出演
2008年10月 『KAMIKESHO / 髪化粧』プロデュース
2009年↓
東京湾・豪華客船シンフォニーにてメイクアップレクチャー
オリコン映画ナビ
『花王アジエンス』TVCM第4弾出演
TBS『ひるおび』ヘアメイクアップアーティストとして出演

美髪ヘアサプリ

著者:寺本 剛
出版社:講談社
発行年月:    2007年2月
ISBN:9784062138420
本体価格:1,200円 (税込 1,260円)

MAGAZINE

CLASSY、ar、mina、saita、MORE
nonno、oggi、SEDA、Cancam、Ray、
FRAU、HAIR MODE、bea’s up、月刊EXILE、etc

MUSICIAN

EXILE、COLOR、J Soul Brothers、etc

LECTURE

NHK、TBS『2時っチャオ!』『ひるおび』、Sample Lab
表参道美肌クリニック、ミルボンアジアトレンドセミナー
国際文化理容美容専門学校、etc

PRODUCE

◆BOOK
美髪ヘアサプリ(講談社)
◆Goods
KAMIKESHO / 髪化粧
◆ADVERTISEMENT
花王アジエンス、パナソニックイオンドライヤー

 

寺本 剛 インタビュー

ヘアメイクアップアーティスト 寺本 剛

 

◆男社会で育った根っからの野球少年が美容の世界へ。

 

Q:ヘアメイクアップアーティストという職業を意識しはじめたのはいつ頃ですか。

「子供のころはヘアメイクアップアーティストなんてまったく意識していませんでした。僕の実家は埼玉なんですけれど、特に両親が美容室を経営していたわけでもないし、僕自身子供のころからスポーツが大好きで、小・中・高校とずっと野球をやっていましたから、美に関わるような仕事にはまったくと言っていいほど接点はありませんでした。どちらかと言えば、それまで僕が興味をもっていたことは、そうした美の世界とは逆の男臭い世界でしたし……。だから意識というか『こんな仕事もあるんだ』と美容の世界に目を向けるようになったのは、ちょうど高校三年生の就職活動が本格的に始まってからなんです」

Q:学生時代とは正反対の道に進むことを決心したきっかけは?

「実は就職活動中に姉に強く進められたのがきっかけなんです。美容師という選択肢を姉が持ってきてくれるまで、僕なりにイメージしていた仕事といえば、やはり男臭い料理人の世界だったんですよ……。何故美容師かといえば、姉が美容師に憧れていたからなんです。でもいろいろと理由があって姉はそちらの道に進むことができませんでした。だから僕には美容師に関する様々な情報を、まるで自分のことのように熱心に教えてくれました。面白いもので、姉の熱意が伝染したのか?そうこうしているうちに僕のほうもだんだんと興味がわいてきて、いつしか料理人の道はどこかに消え去り、高校卒業後に美容専門学校に進むことになりました。きっと姉の助言がなければ今頃料理人になっていたかもしれませんね(笑)」

Q:確かに美容師という仕事に比べて料理人の世界は「男ならではの縦社会」という印象を強く受けますが、それまで野球ひとすじだったスポーツ少年の視点からみれば、美容師も料理人もどちらも、手先の器用さや細かい気配り、さらに美的センスを必要する、ある意味同じような部類に属する職業ではないでしょうか。

「まあそうかもしれませんね。でもそうした器用さや繊細さに関してはまったくの無縁だったわけでもないんですよ。子供の頃から手先を使う細かい作業なんかは得意な方でしたし、そんなことからか?野球でも僕が受け持っていたポジションは、細かい技と客観的な洞察力がより必要とされる二塁手でしたから……。まあ野球をご存知の方ならわかると思いますが、二塁手というのは、派手に守って豪快に打つ『みんなのヒーロー』ではなく、どちらかといえば『玄人好みの職人タイプ』が多いのです。だからそうした職人的要素は充分あったのかもしれません」

ヘアメイクアップアーティスト 寺本 剛

 

Q:まったく世界が違うということで、すぐに嫌になったりはしなかったですか。

「やはり手先を使ったりする仕事は自分に向いていたようで、特に嫌になったりとか失望したということはありませんでしたね。だから美容専門学校卒業後はすぐに地元埼玉の美容室に勤めました。ただ同時に有名サロンの仕事にも興味があったので、時間をみつけては見学のために東京まで足を運んだりしていました。そんなある日、東京の有名サロンの社長さんから『それほど興味があるのならうちでやってみないか?』と声をかけていただき、それがきっかけとなり東京に移りました。結局その有名サロンでは6年間修行しました」

 

◆どんな活動をしていようが、僕にとってはサロンワークが原点です。

 

Q:独立以前の修業時代で辛かったことは。

「美容師という仕事は外から見てイメージされているよりもずっとハードなんです。一日中立ちっぱなしの仕事だから腰痛に悩まされる人も多いですし、毎日何時間にもわたるシャンプーや、パーマ剤・カラー剤などの使用による手荒れで悩まされる方も少なくありません。また腱鞘炎なども職業病の一つではないでしょうか?それにお客様と常に一対一で接する仕事でもあるので、肉体的な部分だけでなく、精神的な部分まで上げはじめるときりがありません。そんな中、とにかく僕が一番辛かったのは『睡眠不足』です。もちろん誰でもはじめはアシスタントとして働きますから、直ぐにお客様の髪をカットしたりはできません。だから一日の全ての業務が終了してから自分たちの練習をはじめます。それも全て自分の技術向上のためにやることだから『何時間やればいい』という問題ではありません。とにかく時間のゆるす限り、自分が納得できるまで練習しますから、気がつけば朝になっていたなんてこともしばしばありました。今思えば野球で培った体力や精神力が、思いもよらぬ場面で大いに役立ったと思っています」

ヘアメイクアップアーティスト 寺本 剛

 

Q:フリーのヘアメイクアップアーティストとして活動しようと考えた理由を教えてください。

「実際に東京の有名サロンで美容師として働くようになり、様々な方々とお会いしているうちに、ひと言で美容といっても実に幅が広いということがわかるようになったんです。サロンワーク以外にも、商品開発や講習、雑誌やCM・映画などの撮影、時には自分自身が話題になったり……。そうした各方面で活躍している人達の話を聞いたり、活動内容を知るにつれ、自分も美容の中の様々な分野に挑戦してみたくなったのが理由です。もちろんこの世界に入ったばかりのころは一刻も早く一人前になるということだけを考え続け、日々の練習と業務に没頭していたわけで、特に埼玉時代はサロンワーク以外の可能性を体感する機会はありませんでしたから、まさか自分がフリーのヘアメイクアップアーティストとして活動するなんてことは考えてもみませんでした。今の僕にとって東京の有名サロンでの経験と出会いはとても大きいといえます」

Q:今お話しされたように、現在は商品開発から撮影、サロンワーク、さらにご自身がCMに出演したりと、様々なシーンでご活躍されていますが、中でも特に好きな仕事はなんですか。

「おかげさまで現在は、美容に関する様々な仕事をさせてもらっていますが、やはり日々たくさんのお客様と直に接することができるサロンワークが一番好きですし、またとても大切にしています。サロンワークなくして撮影や商品開発はありえません。サロンワークこそ僕の原点であり、何かに行き詰まった時に正しい方向に導いてくれるのもサロンワークの積み重ねだと信じています。だから、撮影などの仕事が入ってサロンをぬけなくてはならいようなことがあったとしても、少しでも時間があればサロンに戻ります」

Q:ここからは少しサロンに関する話題から離れ、その他の活動についてお聞かせください。サロンに関してはまた後ほど深く突っ込んでいきたいと思います。

ヘアメイクアップアーティスト 寺本 剛

 

Q:さてサロンワーク以外で、これまでに強く印象に残っている仕事をお聞かせください。

「インドネシアのジャカルタで行われたヘアショーの現場ですね。ちょうど東京の有名サロンでアシスタントをやっていた頃のことです。当時僕はスタイリストの勉強もしていたから、経験を積むという意味も含めて現場に連れていってもらいました。インドネシアは日本と比べて現地のファッション文化が10年以上も遅れていましたし、貧富の差も激しいから美容室と呼べる場所に足を運べる人も限られているんです。だから新しいことを試みたくてもあまりやりすぎるとまったく受け入れてもらえない危険性があるし、それでもバランスよく何かを予感させるような夢を盛り込まなければ意味がなくなってしまうし……。さらにせっかく日本から足を運んできたのだから、日本文化の素晴らしさなどもちゃんと伝えたくて……。スタッフみんなでもの凄く頭をひねりましたよ。でも実際のところ、開けてみなければ何もわからない手探りの状態だったから現場はずっと緊迫していましたね……。とにかく結果的に現地のみなさんには大変喜んでもらうことができたので、方向性や見せ方は間違っていませんでした。特に2,000人を超える観客からスタンディングオベーションをいただいた時には、この仕事をやっていく上でなにか大きな力と感動をもらったような気がしました」

 

◆アジエンスのCM出演効果は絶大だった。

 

Q:海外といえば、花王『アジエンス』の海外テレビCMにもヘアデザイナーとしてご出演されていますよね。『アジエンス』といえば、とても有名な商品ですが、CMに出演したことから、ご自身の活動になにか変化はありましたか。

「はい。もちろん大きな変化がありました。1回目の2006年からはじまり、翌2007年の第2弾、そして昨年の第3弾、実は今年もまた第4回目の出演予定があるんです。ご存知の通り『花王アジエンス』には大きな商品力・企画力がありますから、CMに僕の顔や名前がばっちり出ていたおかげで絶大な効果がありましたよ。たくさんの方がサロンに足を運んでくださいましたし、また『アジエンスツアー』という、海外で抽選を行い、当選した方をわざわざ日本のサロンまで連れてきてくれるという面白い企画もあったので、かなり盛り上がりましたね。ちなみにCMの内容は僕のホームページからも見ることができるので、よろしければご確認ください(下記※印参照)」
※下記ホームページ内『ASIENCE』ボタンクリックにてCMの閲覧が可能です。
URL:http://www.isometic.com/isometic/fullscreen.html

Q:その後「頭皮と髪にもスキンケア発想を」というコンセプトで、『KAMIKESHO / 髪化粧』というブランドを立ち上げられましたが、開設のきっかけなどを詳しく教えていただけますか。

「『KAMIKESHO / 髪化粧』という名前は、読んで字のごとく、髪と化粧を一つにした名前で、『頭皮と髪にもスキンケア発想を』という想いが込められています。実は『アジエンス』をやっている頃、確か2007年の冬だったと思うのですが、『美髪ヘアサプリ』(講談社)というタイトルで『頭皮ケア』の話を本に書かせていただいたんです。『頭皮ケア』とは、美しく健康的な髪をつくるために、頭皮の老化を防ぎ、科学物質などで必要以上に刺激を与えず清潔に保つための提案で、以前から美容師達の間では注目されていたのですが、まだまだ多くの方が、髪は髪、肌は肌で、頭皮の捉え方はかなりいい加減だったと思います。皆さん顔や体のスキンケアや髪の毛のパサつきなどには細心の注意をはらっていながら、実際に健康で美しい髪を育てる頭皮そのものに関してはさほどこだわっていないのです。だから専門家向けにではなく、あくまでも一般の方々にわかりやすく『頭皮ケア』について書いてみたんです。そうしたら思いのほか反響があったんですよ。そんなことからこの『KAMIKESHO / 髪化粧』というブランドは、その本がきっかけとなって、『頭皮ケアの考え方をそのまま商品にできないか?』というお話をいただき、僕がプロディースを担当させていただく運びとなりました」

 

◆洗い過ぎて頭皮がボロボロ?新発想プレシャンプーとは?

 

Q:『KAMIKESHO / 髪化粧』</a>の中に「プレシャンプー」という聞き慣れない言葉をみつけたのですが、普通のシャンプーとはどこが違うのですか。

「『髪化粧プレシャンプー』は、シャンプー前に使用するためのものなのです。厳密にいえばシャンプーも顔に使う化粧品と同じように、頭皮のタイプによって成分が異なるのが正しいわけで、実際に細かく分類していくとかなりの種類が必要となってしまいます。ただ基本的にはシャンプーは髪の汚れを落とすのが一番の役わりですから、化粧品のように何本も購入しなくて済むよう出来る限り種類を絞り、これ1本で誰にでも合う製品をつくりたいということから『低刺激の洗浄成分で汚れを浮き立たせて頭皮と髪をやさしく洗い上げる』ことが可能な『プレシャンプー』を開発しました。多分みなさんは『洗い過ぎ』など意識されることはないと思いますが、意外と洗い過ぎて頭皮を痛めていることが多いのです。それは美しい髪を育てるのは頭皮であり、髪を美しくするためには頭皮のコンディションを整え、バランスよく清潔に保つという考え方がなされていないからです。だから暑い日にスポーツした後でも、寒い日に一日中部屋で過ごした日でも、同じように洗浄力の強いシャンプーをつけてゴリゴリ洗ってしまうのです。実はもともと日本人の肌は乾燥しやすいですから、あまり洗いすぎると頭皮がぼろぼろになってしまい、結果、毛髪にもダメージをあたえてしまうことになるんです」

Q:『プレシャンプー』</a>は実際にはどのように使用するのですか?

「以上のようなことから洗浄力が弱く刺激が少ない『プレシャンプー』と、通常のシャンプーを、その日によってうまく使いわけて洗浄をコントロールしていただけたらと思います。たとえば汚れの少ない日、もしくは敏感肌、子供さんなどであれば『プレシャンプー』を30秒していただき、そのまま『トリートメント』を1分間行っていただくだけで完了。汚れは充分落とせます。あとは汚れの度合いに応じて『プレシャンプー』と『トリートメント』の間に使用する『シャンプー』で調節します。これは本当に気をつけていただきたいのですが、髪の毛についた汚れ自体はそれほどムキになって洗浄しなくてもちゃんと流れてくれるんですよ。不思議な物で、逆に洗浄し過ぎたり、必要以上にトリートメントすることで皮脂が多くなってしまうこともあるんです」

Q:現在『KAMIKESHO / 髪化粧』のラインナップは4点のみとなっていますが、今後アイテム数を増やしたりする考えはあるのですか。

「基本的には『頭皮ケア』という切り口では現状の4点だけですね。内容としては今お話しました『プレシャンプー』をはじめ、それと合わせて使っていただけると効果的な、シリコンや強い界面活性剤は使用せず、刺激の少ない活性剤を使用し、頭皮と髪をいたわりながら潤いを与える天然保湿成分が特徴の『シャンプー』。そして、ハチミツに僅かにしか含まれないタンパク部分を集め、酵素で加水分解した成分が含まれる、しなやかで柔軟性のある髪にする保湿成分が特徴的な『インプループトリートメント』。最後に毛髪のアミノ酸組織に近い植物由来のアミノ酸を配合した、美しく艶やかな髪にする保湿成分が特徴的な『ディボートスペシャルヘアマスク』となっています。これらのケア剤とは別に、スタイリング剤などに関しては今後プロデュースしていく予定です」

Q:いい機会なので私達が日常でついついやってしまいそうな、髪にダメージを与えてしまう行為を教えてください。

「代表的なのは半乾きのまま眠ってしまうことです。もちろん雑菌が繁殖しやすくなります。また濡れた状態はキューティクルが開きやすい状態、イコール髪が痛みやすい状態と言えるので、そのまま眠るとキューティクルが開いたまま髪と髪がこすれ合い、必要以上に傷がついてしまいます。かといって乾かすことだけに夢中になってドライヤーをあてすぎると、髪だけでなく頭皮までひどく乾燥し、大きなダメージを与えてしまうので注意してください。目安は温風で8割、冷風で2割です(表示例:COOL/冷風・SET/温風・DRY/熱風・Turbo/強熱風)。後はシャンプーの時にこすって洗わないということですね。爪を立てて頭皮をゴリゴリするのはいけません。イメージのわかない方は、できれば洗う感覚を忘れてマッサージをする感覚を持ってください。そこまでゴリゴリやらなくても汚れだけなら泡で落ちますから」

Q:サロンワーク以外の寺本さんの活動内容を含め、髪に関する様々な知識や、寺本さんの髪に対する考え方が理解できたところで、また話題をサロンワークにもどしたいと思います。

 

◆お客様が今までに経験したことのないヘアスタイルを提案したい。

 

Q:サロンワークと雑誌やCM撮影などの現場との、意識の違いを教えてください。

「ヘアにしろメイクにしろ、基本的には流行をどう解釈し扱うか?ということだと思います。たとえばサロンワークの場合、いくらお任せとはいっても、お客様もいろいろと流行や自分にあったスタイルを研究されてきている場合が多いですし、あまりに実験的であったり流行からはずれすぎるとやはりお客様は違和感を感じてしまいます。だから今現在の流行をよく把握した上で、そのお客様が何を求めているのかを、会話や、メイク、ファッションから読み取り、必要に応じたアレンジをほどこし、こちらの意見をご提案するといったかたちになります。一方、様々な雑誌やCMなどの撮影は全く逆で、コンセプトをよく理解した上で、1年後、半年後をイメージし、今後それが流行の一部を担うような、ある意味実験的なことを試みたり、今までの流れをスパッと断ち切るような大胆なものに挑戦したりすることもあります。ただ日本には四季がありますから、季節感というのは悩ましい部分ではありますね。リアルな夏を前に、未来の秋のイメージを提案するわけですから」

Q:「提案」という部分で、例えばサロンに足を運んでこられるお客様に何をしてあげたいとお考えですか。

「できれば僕としては、そのお客様が今までに経験したことのないヘアスタイルに共に挑戦していきたいんですよね。はじめて足を運んでくださった方ならなおさらそう思います。これは単に『気分転換にイメージチェンジしませんか?』という意味ではなく、共に新たな美しさを発見し、チャレンジしていきましょうということです。美しさは環境や年齢、興味をひくもの、その他様々な要因から日々変化していると思います。きっと自分でもわからないうちに様々な変化が起こっているのです。だからこそ、お客様ですら気づかないちょっとした変化を見つけ出し、今がベストになるよう手助けするのが僕の役目なのです。どこまでやるかはもちろんお客様次第ではありますが、僕は常にそう思っているので、たとえガラッと変わらなくても、小さな部分でもいいから僕なりの提案をしていき、お客様の今を見つめ、新たに生まれた美しさを見つけ出し、それを引き立てることを心がけています」

ヘアメイクアップアーティスト 寺本 剛

 

Q:提案をするにあたって、寺本さんはどのタイミングで方向性を決定されるのですか?

「だいたいお客様がサロンに入ってこられてイスに座るまでに様々なシュミレーションを頭の中で行いますね。例えば現状維持からの発展系ならこうで、方向性をかえるのならこうとか……。リピーターさんに関しても常にはじめてのお客様という感覚で、常にその時々のインスピレーションを大切にします。でないとこちらで勝手に『この人はこんな人』と決めつけてしまうからです。先ほども話したように、環境や年齢によって洋服やメイクの好みが変化することは誰にでもあるじゃないですか?だからお客様のそうした部分にいち早く気づくことも、こちらから何かを提案する上でとても重要なことなんです。お客様がサロンにすっと入ってこられた時に、瞬間的に何かを感じ取ることを常に心がけておかなければ、いろんな意味で駄目なんです」

Q:では提案するためのアイデアなどはどのように整理されているのですか。

「自分の目にとまったものは、写真をとったり、切り抜いたりして常にファイリングしています。もちろんヘアメイク、ファッション、その他なんでもです。今の時代インターネットという便利なものがあるので、必要な時に必要なものをキーワード検索で引っ張ってくるという手段もありますが、でも僕の場合は自分で切り取って、そこにメモなりをかき込んで頭にたたきこんでおかなければ納得できないんですよ。何故かと言えば、アイデアのヒントとなるのは、そうした画像だけでなく、例えば流行に敏感なファッション雑誌の編集者の方や同業者の言葉の中にあったりもしますし、様々なアイデアもお客様と雑談をしている時にふと浮かんだりすることもあるんです。だからその時に、言葉や画像・文字など、あらゆる情報が頭の中でさっと繋がり、できるかぎり明確な映像に変換できるような状態にしておく必要があるのです。それにサロンに足を運んでくださったお客様に、何かをご提案するにしても、脳みその中にたくさんアイデアのストックがなければすぐに形にもできませんし、僕が迷っているとお客様が不安になってしまうじゃないですか……。また雑誌やCM、アーティストとの仕事の場合は特に、あらゆる状況・トラブルにスピーディーに対応できる臨機応変さが求められます。一緒にヘアカタログとにらめっこでは仕事になりません」

 

◆たとえお客様の要望であっても、それが頭皮や美髪を阻害するような行為であればはっきりとお断りします。

 

Q:例えばお客様がどうあろうが、寺本さんがここだけは譲れないという部分はありますか?

「ある意味すごく当たり前のことなのかもしれませんが、『髪は絶対に痛めない』という部分は徹底しています。たとえ美しいスタイリングに仕上がったとしても、それはスタイリングが美しいだけで、髪そのものが健康でいきいきしていなければ意味がないし、僕が担当する必要がなくなります。僕は『根本的に美しい髪』をつくる手助けがしたいんです。これは『頭皮と顔は一枚皮』という僕の美髪美肌理論に直接繋がることだから譲れません。だからお客様が『こんな色にしたい』とのご注文があったとしても、もし2ヶ月後、3ヶ月後に髪が痛むのが目に見えていると僕が判断した場合は絶対に止めます。最近はデジタルパーマ(形状記憶パーマ)などが流行っていますが、こちらも同様です。それでも無理にお願いされる場合は『申し訳ございませんが僕にはできないので別の美容室でお願いします』とはっきりお断りします。例外として、ロングの方が『2ヶ月後にばっさりボブにするから』という理由で、痛むのをわかっていながらパーマをかけるということはあります。そんなことから僕のお客様は『髪が痛んでいる』という方が非常に少ないのです。もちろんサロンワークでお客様と身近に接しなければなりませんからタバコは吸いません。あとこれはお客様には関係のないことですが、僕的なこだわりとして、自転車やバイクには絶対に乗らないです。僕の仕事は指先が命ですから」

ヘアメイクアップアーティスト 寺本 剛

 

Q:実際にもの凄く髪が痛んでいて、どうにかしたいという方もこられますよね。

「もちろんこられます。みなさん市販のシャンプーやリンスをあれこれと変えながら苦労されているのでしょうが、根本的な問題を解決しなければいくら高い商品を購入しても解決しない場合があります。ですからやはり一度サロンに足を運んでいただいて、髪や頭皮の状態をみせていただき、シャンプーの使用方法からトリートメントのやりかたまで、直接その方にあった方法をお教えするのが一番です。中には一見すると重傷っぽく見えていたのに、ケアをはじめたらみるみるきれいになっていかれた方もいらっしゃいます。一番よくないのは、間違った方法を信じこんでいつまでもやり続けるということですね。特に女性はお化粧やスタイリングに時間がかかるから、頭皮や髪のケアにまで多くの時間は割けないといった部分もあるのでしょう。でも実は痛んでいない頭皮・髪であればスタイリングも早く美しく決まるし、お手入れにもさほど時間がかからないのです。知らず知らずに髪が痛むようなサイクルに陥ってるということが実に多いのです。変な話ですが、その中には先ほど話した『洗い過ぎ』も含まれるんです。いくら清潔でいたいから、臭いが気になるからといって、洗浄力が強いシャンプーで頭皮や髪がバサバサになるまで洗っていては、何をやっても無意味ということにもなります」

Q:ここまでお話を聞いていて、日々のサロンワークを通じて得られるものの多さや、寺本さんが「サロンワークが原点」という意味がなんとなくわかるような気がしてきました。さてインタビューも終わりに近づいてきましたので、まとめの意味も含めて寺本さんの今後の目標などをお聞かせください。

「ちょっと具体的でない言い方になってしまいますが、僕のもとに足を運んでくださる身近なお客様達を今まで以上に大切にすること。これが当面の目標と言えます。やはり僕がすべきことは、少しでも多くの方の髪を根本から美しくすることを基礎とし、お客様の小さな変化を見つけ出し、共に磨き上げ、心から美しくなっていただく手助けをすることなんです。もちろんその他の華やかな仕事も、僕にとってはとてもやりがいのある大切な要素のひとつではありますが、しかしそれらの仕事の依頼があるのも、全て僕なりの美髪美肌理論に基づいた行動の積み重ねがあってこそなのです。だとすれば、まず何からはじめなければならないのか?常にどうあるべきか?はひとつしかないのです」

ヘアメイクアップアーティスト 寺本 剛

 

Q:それでは最後になりますが、寺本さんが最近特に嬉しかったエピソードを教えてください。

「あります。つい最近、サロンでのことなんですけれど、僕のところにいつも通ってくださる18歳の女性が『私ではなくお婆ちゃんをカットしてほしい』って言うんです。『お婆ちゃんをきれいにしてあげたい』って!よくよく話を聞いてみれば、お婆ちゃんの誕生日にカット券をプレゼントしたいということでした。結局、当日彼女とお婆ちゃんが一緒にサロンに足を運んでくださって、いろいろおしゃべりをしながら僕がカットをしたのですが、二人共すごく喜んでくれて、その二人の姿をみていたら、なんかもの凄く嬉しくなってしまって、しばらく忘れられませんでした。そんな小さな喜びが日々積み重なっていくととても大きな力になって、凄くやる気がわいてくるんですよね」

ありがとうございました。

 


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