筑紫哲也さんに聞いた!


投稿:2007.02.20
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TBSテレビ系『筑紫哲也NEWS23』のメインキャスターとしてもお馴染みの「筑紫哲也」さんに、今、気になる世の中の事、宮崎の事を聞いてみた!

筑紫哲也さんに聞いた!

 2007年1月、南国宮崎に新しい県知事が誕生しました。それから早1ヶ月が過ぎ、”そのまんま東”さんは”東国原(ひがしこくばる)知事”となり、その知名度から宮崎県は連日連夜に渡り、テレビ番組や新聞・雑誌等をはじめ、様々なメディアに取り上げられています。さらに季節がら春のスポーツキャンプシーズンとも重なっているため、メディア各社は宮崎に大挙し、東国原知事の追跡報道はじめプロスポーツチームのキャンプ取材で大忙しのようです。思えばこれほどまでに宮崎が注目されるのは昭和30年代の新婚旅行ブーム以来ではないでしょうか……?
筑紫哲也さんに聞いた!筑紫哲也さんに聞いた!

 ということで、その余波が確実に『宮崎県情報サイトパワナビ』及び『日向時間』に携わる私めにも伝わり、なんとTBSテレビ系『筑紫哲也NEWS23』のメインキャスターとしてもお馴染みの”筑紫哲也さん”に直接お話を聞かせていただけるという貴重な機会をいただきました!
(レポート:藤木テツロー)

 

筑紫哲也さんプロフィール

 1935年大分県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。TBSテレビ系「筑紫哲也NEWS23」メインキャスター。ジャーナリスト。NPO「スローライフ・ジャパン」理事。

◆TBSテレビ系『筑紫哲也NEWS23』
◆マンデープラス
◆スローライフ―緩急自在のすすめ(岩波新書)

 

きっかけは……。

 まずはじめに、なぜこのような機会が訪れたのか?を少し説明させていただきます。2月16日(金)の午後、たまたま宮崎市の平和台公園内にあるとあるレストランで、藤木テツローが発刊しておりますフォトメッセージマガジン『日向時間』の「スライドショー+お話し会」の打ち合わせをしていたところ、知り合いの女性が「明日、筑紫哲也さんが宮崎に取材に来るみたいだけど、取材の後に交流会のようなイベントが企画されてて、イベントスタッフの方がテツロー君にもその会に参加して欲しいみたいなこと言ってたよ」なんてことを言うのです。いきなりの事だったので詳細がはっきりしなかったのですが、どうやら筑紫さんが東国原知事の取材をするために宮崎を訪れるという情報が入り、「みやざきみらいフォーラム」スタッフの”武井俊輔さん”を中心とする若手有志が、「綾を中心に宮崎に関心の高い筑紫哲也さんに宮崎の様々な分野で活動する若者を紹介したい!」とお願いをしたところ、それを快く受け入れてくださった筑紫哲也さんが、挨拶だけでなくお話しができる時間まで作ってくださったとのことでした。
「細かいスケジュールは明日」ということだったので、翌日連絡がくるのを待っていると、夕方5時過ぎにイベントスタッフの方から「山形屋のスターバックスコーヒーに筑紫さん入りましたけど、お時間ありますか?」と電話がありました。「それは早速行かねば!」と思い、急いでスターバックスコーヒーに行って見ると、山形屋店内側の一番目立つところに筑紫さんが座っていました。
 ガラス越しに見る筑紫さんは、テレビで見る筑紫さんそのもので、「あ、筑紫さんだ」と思わず呟いてしまいました。僕が到着した時はすでに話し合い(交流会)は始まっており、筑紫さんはたくさんの人に囲まれていました。ちなみに会場に集まったのはどういった人達だったかといいますと、宮崎大学や宮崎公立公立大学を中心とした大学生を中心に、公務員、自営業などさまざまな分野の若者たち。そして宮崎のメディア関係者も数人いらっしゃいました。

 

筑紫哲也さんに聞いた!

※僕が会場に到着した時、筑紫さんはすでに下記のようなお話をされていました。

筑紫哲也さん

 ユネスコが子供たちの幸福度っていうのを調べた統計があってね、世界中で一番孤独な子供が多いのは日本なんですよ。三人に一人の子供が孤独なんです。家族がいたって携帯電話でコミュニケーションしていて、とにかく生の声でのコミュニケーションが少ないんですよ……孤独になるんですよ子供たちが……。 (また前記とは別な話題→)たとえば日本の医者は病気は治すけど患者は治さないって言われるんだよね。病気そのものを治すレベルは高いんだろうけど、病気が治った患者がすぐ死ぬ場合も結構あるわけですよ・・・。医療の現場では境界領域の縦割りがひどいでしょ。それぞれにすごい専門家がいるんだけど、そこがうまくリンクしていないんだよね……。人間の体はみんな関係して色んな症状が出てるわけじゃないですか……。だから社会科学っていうか世の中の仕組みから離れすぎてる日本のお医者さんは「やばい」って言ってるんだよね……。お医者さんになる人ほど本当は知らなければいけないよね……世の中のことを……。実際はそうなってないよね。(医学部の学生も参加していたのでこのような話にもなりました)

筑紫哲也さんに聞いた!

▲話を聞く藤木(左) 筑紫哲也さん(右)

※ふむふむと、納得しながらも筑紫さんの話を聴いていると、筑紫さんの目の前に座っている人が僕に席を譲ってくれて、スタッフの武井俊輔さんが筑紫さんに僕を次のように紹介してくれました。
「彼は高千穂町在住で『日向時間』という写真雑誌を作っている藤木さんです。日向時間という言葉に関して宮崎では5分、10分、時間に遅れても日向時間だからいいよね!みたいな時間にルーズなことで、あまり良い意味で使われないのですが、ゆったりした宮崎らしいというイメージの良いところもあるんです」

筑紫哲也さんに聞いた!

▲筑紫さんの右隣が武井さん

藤木テツロー

 藤木と申します、宜しくお願いします。中央九州の様々な情報をウェブで発信してる『パワナビ』というサイト内で特に人にスポットをあてたコーナーを担当しています。今回は宮崎人という切り口ではないのですが、ぜひご紹介させていただきたいと思います。また武井さんからのご紹介にありましたように、県北の高千穂町で『日向時間』という写真雑誌を作っています。(『パワナビ』と『日向時間』の名刺と、フォトメッセージマガジン『日向時間』を手渡させて戴きました)

筑紫哲也さんに聞いた!

▲筑紫さんに日向時間を手渡す

筑紫哲也さん

 これがそう?『日向時間』へ~!あっ、そういえば今日、東国原知事と話してたらこっちが何にも喋ってないのに知事が「スローライフ」っていう言葉を使ったわけ……。僕は「NPOスローライフ・ジャパン」の理事をもやっているし、岩波新書で『スローライフ―緩急自在のすすめ』っていう本を出しているから、知事が「スローライフ」って言ったのに驚いたんだけど、、これ(スローライフ)が『日向時間』と関係があるわけなんだよね……。僕は昔沖縄に住んでいたんだけど、日本に返還される前の沖縄には『日向時間』に似た言葉で『沖縄タイム』っていうのがあって、約束事なんかするとね、みんないつも一時間遅れなんですよ・・・わりあい正確に一時間きっかり遅れてやってくるの(笑)……。今、日本はご存知のように世界で最長寿国ですよね。その中で沖縄県が日本一だってことは、世界一の最長寿国が沖縄だっていうことですよ。いや、だったんですよ……。平均寿命に関しては全国46都道府県の中で、沖縄の女性は依然として1位なんですけど、近年男性が1位からいきなり26位に落っこちたわけ……。早い話が急落したわけね!じゃぁ、何故そんなに急激に落ちたのかが大問題なわけで議論はいっぱいあるんだけれども、一つの理由としては”時間”があげられるんですよ……。沖縄が日本に返還されて本土化されて、昔にくらべて沖縄の人が時間を守るようになってきたの!たとえば、僕は沖縄に住んでいた人間だから沖縄との関わりが多くて、今でも沖縄に講演しに行くんですけど、面白い事に講演の開始時間があんまり遅れないで始まるようになったわけ……。だんだん正確になるどころか「早めに始めましょう」って言うわけ……。僕は沖縄が好きな理由の一つに「沖縄は時間がゆったり流れてるから」というのがあるだけに、以前「こんなに時間が正確に真面目になったら沖縄は大切なものを失うよ」って言ってたんだけど……。でも、それが平均寿命なんですよ。沖縄はおばあちゃんのことを「おばあ」っていうんだけど、その「おばあ」が強いわけよね!”家父長制”じゃなくて”家母町制”っていうくらい家の中で”どすん”とお母さんが構えているんだよね!だから女性は自分たちのペースを今でも守っているんですよ。逆に、うまく息抜きができないまじめな男性達は近代化した途端にストレスですよ……。女性に比べ男性は不器用だし真面目であるから、近代化した途端にストレスですよ。それで、1位から26位まで急落したわけね。

藤木テツロー

 僕が考える宮崎の『日向時間』というのは、自然に寄り添って生きてきた生活の時間、郷土に根付いた時間だと思うんです。時間が、きちっ、きちっと守れるのは人間が造ってきたものの中だけのことだと思うんです。

筑紫哲也さん

 人類は産業革命の前までは、日が昇ったら働いて、日が沈んだら寝たわけ……。ところがね、イギリスで産業革命っていうのがおきて工業化していくわけだけど、工場を造るときに工場主が最初に大事だと思って造ったものは何だか知ってる?それは時計台ですよ。今まで農業をやっていた人たちや色んな人たちが工場で働きはじめるわけでしょ、最初に教えなきゃならなかったのは「仕事は日が昇ったら初めて日が沈んだから終わる」んじゃなくて「仕事は時間で始まって時間で終わる」っていうことだったの。つまり、人間は時間で……。時計で働くということを教えることが産業革命に人をならす最初だったの。そうして近代は始まったわけですよ。だけど、どっかに不自然なとこがあって……。だから今日、「東国原知事と宮崎県は何を目指すのかを考えないといけない」という話をしたときに、「なんの物差しで宮崎の価値を計るのかということが大切」といった話をしたんだよね。経済でばっかし数えると350億円削れなかったとか、会社が100社来なかったとか……。そういった数字だけを見て「お前は何をやってる!」っていう話になるんでね……。だから知事には「もっと違う物差しを持たないと本当に宮崎を変えることにはならないんじゃない?」っていう話をしたら、彼は「スローライフ」って言ったから、僕はびっくりしたんだよ。スローフードっていうのはイタリアで出来たんだけど、ようするに地元のものをゆっくり食事をすることで、「我々はガソリンを補給するようにジャンクフードや、ファストフードを食べて走るようなものではない、人間は自動車ではないんだ!」と宣言したのがイタリアのスローフード宣言なんだけど、食べ物だけじゃなくて、人間の文化には”衣食住”っていうのがあるんだから、じゃあ”住 “のスローフードは何だろうか?”衣 “のスローフードは何だろうか?と考えていくと身の回りにたくさんあるんだよね……。君の言うように宮崎に生きている人が宮崎の流れの時間の中に生きて、「あ~ここに生きているのが幸せだな」と思えれば、知事さんが何をやるにしろ一つの目標を達したことになる。その物差しでみんなが数えてくれるならそれはいい事だよね!逆にそうじゃなくて、経済効率でGDPの計算を始めると、それと反する部分が出てくるよね。

筑紫哲也さんに聞いた!

 

藤木テツロー

 宮崎県が一年間に福岡に本社のある電力会社に払っているお金が1,300億円以上あるそうなんです。例えばそれを太陽光発電等の自然エネルギーに変え、1/3でも宮崎の中でお金を回せることができれば350億円は簡単に削れるし、宮崎は世界に誇る太陽光発電の基地となるんじゃないかと思うのですが?

筑紫哲也さん

 簡単に削れる……。か……。あっ、そうだ、もう一つ知事とお話しをしたのがね、宮崎が最初から持ってるプラスのことがあるんだけど、日本列島で南向きにバッ~と横っ腹出しているのは日本全国で宮崎県だけなんですよ。こんなに県の海岸線そのものが南に腹をだして、自然が残っているところは日本で宮崎以外ないわけですよ。君は太陽の話をしたけど、こんなに天然のプラスがあるのに、そんなことをみんなGDPなんかに換算しないでしょ。それをもしブータンの王様が言い出したような、GNH(国民総幸福)という「幸福指数」で表わしたらバッ~と上にあがるわけですよ。

藤木テツロー

 太陽だけでなく、宮崎は”水”にも恵まれているんです。水の循環というのは平均で十日だそうなんですけど、宮崎は宮崎の自然の中でほぼ完結されていて、宮崎の山に降った雨が宮崎の川を通って宮崎の海に流れ着いてまた、宮崎の山に帰ってくる。それだけでも恵まれていることだと思います。だから、一つの色々なモデルにはなりやすいだろうなと思んです。

筑紫哲也さん

うん、そうだね~。

藤木テツロー

 スローライフについてですが、田舎は6月から8月まで、日曜日以外の夜の20時から22時までは、消防団の訓練がずっとあるんですよ。日曜日は地区の草刈があったり、忙しくて全然ゆっくりはしてなんですよね。だから、都市の人がどれだけ田舎の現状を理解しているのか疑問ではあるのですが……。

筑紫哲也さん

 田舎がスローライフというようなイメージにつては、以前、歌手の加藤登紀子さんともそういう話になったことがあったんだけど、加藤さんのご主人が亡くなられて、ご主人がやっていた農園を多少は加藤さんも面倒みなければいけないと思って田舎に戻って生活してみたそうで、その時の体験から「スローライフなんてとんでもない!スローライフどころか、田舎の方がよっぽど忙しくてやらなきゃならない事がたくさんあるわよ!」って言ってたんだよね。まあ都会の暮らしになれている人が、実際に田舎で生活するとなればそう簡単にはいかないですよ・・・。だから実はね、スローとファーストっていうのは時間だけで計るのは間違えだなと思ってるし、僕が初めから言っているのは、「ファーストをあまりにも価値にしすぎる世の中だから、ファーストに対してスローの効用を考えましょう・・・どっちを選ぶかは自由にしましょう」と、こういう運動なんですよ!単に時間だけが早ければいい、遅ければいいという問題ではなくて、時間の使い方だと思うんですよ。

筑紫哲也さんに聞いた!

 

藤木テツロー

時間の使い方ですか……?

筑紫哲也さん

 これは、なかなか難しい問題だというのは分かっているから、せめて「世間がそうだからそうしましょう」って自分で決める事をしなで、自分が無駄だなと思いながら使う時間はなるべく少なくしようっていうこと。だから、「緩急自在」って言っているのは、「自在」っていうのが大事で、「自ら」が「在る」って、書くわけ。つまり自己決定なわけよ。

 

※(なるほど~!)と歓心感心していたら、後ろから肩を叩かれ交代の合図。できればもう少し、話したいと思いながらも、「本当にありがとうございました」と筑紫さんにお礼を言い、僕の持ち時間は終了しました。

 

藤木テツローの感想

 筑紫さんは、サーファーが中心となって反対運動をおこしている大淀川下流に広がる赤江浜の人工リーフ建設問題の現場である赤江浜にも昨年の二月に訪れ、「海のことをやるには、山の人と繋がりなさい」とサーファーたちにメッセージを残しているし、また綾の照葉樹林を世界遺産にする活動にも賛同されているように、宮崎県にはとても好意を持たれているようです。筑紫さんは、参加者達からのたくさんの質問に対して様々な引き出しから色々な話を取り出し、とても分かりやすく丁寧に答えてくれました。一緒に座っていた大学生たちも、その知識の量に驚いたと言っていました。
 僕が筑紫さんに伝えたことは、この一年間で『日向時間』を通し、ご協力いただいた皆さんから学なばせていただいた事です。太陽光発電の話はNPO法人(市民ソーラー・宮崎)副理事長の中川修治氏に(冬・迎春号にて執筆)、水の循環の話は農学博士・竹下伸一氏に(秋号にて執筆)、筑紫さんが仰っていた経済とは違う‘物差し‘の話も、五ヶ瀬町の夕日の里づくり代表の後藤福光さんは ‘心の物差し‘という言葉で仰っていました(冬・迎春号にてインタビュー)。う~ん。確かに、僕としてはそれらの内容は受け売りではありましたが、とにかく宮崎の良いところを筑紫さんのような有名なジャーナリストに伝えられたのは良かったと思っています。宮崎に好意的な筑紫さんだけに『日向時間』を読んでくれれば(きっと)感動してくれるはず!と勝手に思っています。

 

筑紫哲也さんに聞いた!

▲宮崎大学医学部のみなさんと筑紫さん

 

 筑紫さん、貴重なお話を聴かせて戴き、誠にありがとうございました!そして関係者の皆様、このイベントにお招きいただきまして誠にありがとうございました!

 


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