密着!高千穂夜神楽


投稿:2009.12.18
【高千穂エリア】 【観光スポット】 【マニアック】 【地域】 【カルチャー】 【その他】

高千穂夜神楽未体験の方々必見!岩戸・五ヶ村集落の高千穂夜神楽を始まりから終わりまでまるまるレポート!

密着!高千穂夜神楽

 稲刈りも終わり、山を彩っていた紅葉もすっかりその色を落とした晩秋の頃から、草木も凍てつく二月初旬まで、高千穂のムラでは集落ごとに夜神楽が奉納されます。天岩戸開きの神話になぞり、一晩中舞われる夜神楽には、氏神様に一年の収穫と加護を感謝するとともに、ムラの安寧と五穀豊穣の祈りが込められています。

 全国的に有名な高千穂夜神楽ですから、観光客も訪れます。なかにはマニア的に夜神楽に惚れこみ、毎週のようにこられる方もいらっしゃいます。夜神楽は神事でありますが、年に一度の楽しみごとでもあります。昔は、この日の神楽宿(夜神楽が舞われる宿)が若者たちの出会いの場であり、今風に言えば、婚活の場でもあったそうです。今でも、この日の出会いは多いようで、僕の知人の奉仕者(神楽を舞う人)も、夜神楽が好きで高千穂に通っていた女性と結婚しました。この日は、みんな心が浮立つようです。

高千穂夜神楽・イメージ高千穂夜神楽・イメージ

 今回、お邪魔させていただきましたのは、岩戸の五ヶ村集落です。一昨年前に、高千穂町上田原集落で、夜神楽の舞いを中心にレポートしましたが、今回は、地元在住のレポーターとして、ごくごく私目線で、地元の方の夜神楽の夜の楽しみ方をレポートしました。スナップ写真が中心となっていますが、どうぞ、夜神楽に行ったつもりで一緒にお楽しみ下さい。
(レポート:藤木テツロー)

協力

興梠酒店 
URL:http://www.miya-shoko.or.jp/takachiho/umai/koroki.html

株式会社高千穂交通
URL:http://0982722145.jp

一般社団法人 高千穂町観光協会
URL:http://www.takachiho-kanko.jp

参考図書

祈りと伝承の里 高千穂の夜神楽(1,600円)
一般社団法人 高千穂町観光協会

 

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地元「高千穂交通」のタクシーで神楽宿に

 この日は、潜入レポートということで(地元の方と同じように焼酎をのみますので)、地元のタクシー会社、「高千穂交通」のタクシーで神楽宿に向かいます。お世話になっている甲斐専務にも同乗していただきました。タクシーで行くのはお勧めです。特に観光客の皆さんには、強くお勧めします。なぜかというと、町内在住の私でさえも、神楽宿がどこにあるか把握できない場合が結構あります。細道、山道、獣道の高千穂です。到着しても、駐車場がなくて往生し、霜や雪に見舞われ不安になることがあります。

高千穂夜神楽・高千穂交通高千穂夜神楽・準備

 もう一つ、タクシーの利点としては、焼酎が気兼ねなく飲めます。集落の事情によっても違うのですが、神楽宿ではムラの人がカッポ酒(竹に穴を開けて、酒を入れ、そのまま火にくべて熱燗にしたもの)や焼酎を振舞ってくれる場合があります。自分で運転していくと、飲酒運転になるので飲めません。それに、神楽宿は大抵の場合、窓が外してあります。極寒の中で一晩中観覧することになるのですが、そんな時に、体を温めてくれる焼酎は、ありがたいものです。

高千穂夜神楽・興梠酒店高千穂夜神楽・高千穂交通

高千穂夜神楽・イメージ高千穂夜神楽・イメージ

高千穂夜神楽・イメージ高千穂夜神楽・イメージ

高千穂夜神楽・イメージ高千穂夜神楽・高千穂交通

 まずは、神楽宿に持参する焼酎を地元の酒屋・興梠酒店で購入。店主の興梠正幸さんに、熨斗(のし)を書いていただきます。神楽宿には「御神前」、食事にお呼ばれしている宿には「寸志」が、町内では一般的です。この焼酎は、いわゆるお供え物です、神楽宿にお迎えする氏神様に奉納します。「高千穂交通」では、夜神楽が行なわれる全集落にお供え物をするそうです。甲斐専務「日頃お世話になっているので、お礼を込めて、その集落の氏神様に奉納させていただきます」

高千穂夜神楽・焼酎準備高千穂夜神楽・焼酎準備

 焼酎二~三本。もしくは、初穂料として二~三千円を包んで持っていくのが一般的です。これは、儀式としても、マナーとしても、必要なことです。地元のタクシー会社、酒屋さん、高千穂町観光協会の職員の方に聞けば、万事教えていただけますので、夜神楽に行かれる際には、気楽に訊ねてみるとよいと思います。

高千穂夜神楽・焼酎

 この日は、岩戸・五ヶ村集落以外にも、三田井・下川登集落、押方・山附集落でも夜神楽が行なわれています。途中、下川登集落を通りましたが、注連飾りが飾られ、御幣が道に連なっているのを見て、段々と気持ちが高揚してきます。この高揚は祭、独特のものですね。太鼓や笛の音、神楽唄。焚き火や焼酎や山のご馳走。細胞を刺激するものへの期待で、ドーパミンが出ているのでしょう。午前中に降っていた雨も上がり、夜神楽にはよい日となりました。

 

夜神楽の準備

高千穂夜神楽・準備高千穂夜神楽・準備

高千穂夜神楽・準備高千穂夜神楽・準備

高千穂夜神楽・準備高千穂夜神楽・準備

高千穂夜神楽・準備高千穂夜神楽・準備

 神楽宿に到着したのは午後二時過ぎ、庭ではムラの人が総出で夜神楽のしつらえをしています。友人の高藤文明(44歳)さんも(後で、御宅にお邪魔します)、働いています。切り出した長竹に何やら飾り付けをしています。上部を藁で装い、そこに白い御幣を刺します。

高千穂夜神楽・準備

▲柱連柱とよばれる、言わば神様のアンテナ。

「11本でいいっつぉ」。「もちっと、余裕を開けろ」。年配の人からアドバイスが飛びます。「どんげぇじゃったかの~?」「逆回しじゃねぇかったかぁ?」 毎年のことなので、みんな熟知しているのかと思ったら、案外、うる覚えの様子。ああでもない、こうでもない、話しあいながら作業が進められます。みんな笑顔で楽しそうです。

高千穂夜神楽・準備

 やがて、竿の先に神様の名前・『天津児屋根命(あまつこやねのみこと)』と墨で書かれた、白布がしつらえられます。竹は全部で三本。他の二本にも、それぞれ神様の名が書かれた白布が結び付けられます。これをみんなで立てます。土台は、竹や木材でつくられ、柴で覆われています。「若ぇもんが上がれ~」。男衆が立てます。立ち上がると、ほっと一息。「雨が降らんでよかったの」。お爺さんが、安堵の表情です。 この長竹は柱連柱と呼び、言わば神様のアンテナです。ここを通って神様が、神庭(二間四方の神楽が舞われる舞台)に舞い降りるのです。

高千穂夜神楽・準備風景高千穂夜神楽・準備風景

高千穂夜神楽・準備風景高千穂夜神楽・準備風景

 料理をつくるのは、もっぱら女衆(おなごし)の役目。ドラム缶を改造した竈(かまど)の大鍋では、煮しめやだご汁が作られます。猟師が獲ってきた、鹿や猪も調理されます。「包丁は切れるのぉ?」「骨がてにゃわん」「骨も美味ぇけんどの」「塩、胡椒して、内緒で食え」 味を知っている男衆が、自然と吸い寄せられるように、集まってきます。

高千穂夜神楽・準備風景高千穂夜神楽・準備風景

高千穂夜神楽・準備風景高千穂夜神楽・準備風景

高千穂夜神楽・準備風景高千穂夜神楽・準備風景

高千穂夜神楽・準備風景高千穂夜神楽・準備風景

 神庭のしつらえは、奉仕者の役目。この集落以外の奉仕者も手伝いに来ます。昔は、そこの集落の農家の長男だけしか奉仕者にはなれず、集落ごとに厳格な決まりごとがありましたが、現在では、高千穂町もご他聞にもれず、過疎化、少子高齢化が進み、夜神楽を行なう集落も減少しました。そのため、ルールも緩められ、奉仕者どうしが協力し連携しているのだそうです。この日のために、他県から帰ってくる奉仕者もいます。こうして、高千穂の夜神楽は守られています。

神庭(二間四方の神楽が舞われる舞台)

高千穂夜神楽・神庭

 神庭は、それぞれの形が面白い彫物(えりもの)という紙飾りで四方を飾ります。天井には「雲」とよばれる天蓋が設けられ、正面には面様(神面)が祀られます。ここでも、ああでもない、こうでもない、若い奉仕者が、話しあいながら作業します。天蓋の位置が低すぎると、舞い手の採り物(手に持つもの)が当たってしまうので、藁で編んだロープを何度も引っ張ります。こうして、神聖な神庭がしつらえられていきます。

高千穂夜神楽・イメージ高千穂夜神楽・イメージ

高千穂夜神楽・準備高千穂夜神楽・準備

高千穂夜神楽・準備高千穂夜神楽・準備

高千穂夜神楽・準備高千穂夜神楽・準備

高千穂夜神楽・準備高千穂夜神楽・準備

 休憩後、今度はカッポ酒に使う竹カッポ・竹コップづくりが始まります。男衆が鉈やナイフを手に、手際よく作っていきます。カッポ酒は、酒を注ぐときに、竹に開けた穴から焼酎が流れ「カッポ、カッポ」と、音がするので、カッポ酒と名づけられたと言われています。

高千穂夜神楽・歳宮神社

高千穂夜神楽・準備風景高千穂夜神楽・準備風景

高千穂夜神楽・準備風景高千穂夜神楽・準備風景

高千穂夜神楽・準備風景高千穂夜神楽・準備風景

高千穂夜神楽・準備風景高千穂夜神楽・準備風景

高千穂夜神楽・準備風景高千穂夜神楽・準備風景

高千穂夜神楽・準備風景高千穂夜神楽・準備風景

高千穂夜神楽・準備風景高千穂夜神楽・準備風景

高千穂夜神楽・準備風景高千穂夜神楽・準備風景

高千穂夜神楽・準備風景高千穂夜神楽・準備風景

 神迎えの神事を終えると、日向組(ひなたぐみ)の男衆は解散(五ヶ村集落は、日向組、日陰組(ひぞえぐみ)と分けられ、毎年、交互に夜神楽を行ないます。今年は、日陰組の番)。今夜お世話になる高藤さんも、今度は自分の家の準備にと帰っていきました。

高千穂夜神楽・準備風景

 

高藤家の祭

高千穂夜神楽・高藤家高千穂夜神楽・高藤家

高千穂夜神楽・高藤家高千穂夜神楽・高藤家

高千穂夜神楽・高藤家高千穂夜神楽・高藤家

高千穂夜神楽・高藤家高千穂夜神楽・高藤家

高千穂夜神楽・高藤家高千穂夜神楽・高藤家

高千穂夜神楽・高藤家高千穂夜神楽・高藤家

高千穂夜神楽・高藤家高千穂夜神楽・高藤家

高千穂夜神楽・高藤家高千穂夜神楽・高藤家

高千穂夜神楽・高藤家高千穂夜神楽・高藤家

高千穂夜神楽・高藤家高千穂夜神楽・高藤家

 夜神楽の日は、夜神楽がある集落の民家でも客人を招いての宴会が開かれます。「神楽にでてきない」僕がそう誘われたのは、高藤家。高藤文明さんとは、町内のさまざまな活動を一緒にしています。その朗らかな人柄から、『ぷーさん』というニックネームを持っています。

 僕が到着したのが午後六時過ぎ。七時過ぎには西臼杵支庁の農政水産課の皆さんが到着し、その後、大分、熊本、長崎の高藤さんの地域作りのお友だちや親戚などが加わり、あっという間に大宴会となりました。

高千穂夜神楽・高藤家高千穂夜神楽・高藤家

高千穂夜神楽・高藤家高千穂夜神楽・高藤家

 煮しめやら、うどんやら、高千穂牛のたたきに舌鼓をうちながら、初めて会う人たちと焼酎を飲みます。友だちが友だちを呼んでくることもあるので、なかには家主の知らない人も混ざっています。 「夜神楽ん日は、いつもより飲めるとの」。楽しいお酒が飲めるのも、夜神楽のお陰です。

高千穂夜神楽・高藤家高千穂夜神楽・高藤家

高千穂夜神楽・高藤家高千穂夜神楽・高藤家

高千穂夜神楽・高藤家高千穂夜神楽・高藤家

高千穂夜神楽・高藤家高千穂夜神楽・高藤家

高千穂夜神楽・高藤家高千穂夜神楽・高藤家

高千穂夜神楽・高藤家高千穂夜神楽・高藤家

高千穂夜神楽・高藤家高千穂夜神楽・高藤家

 ほろ酔いとなり、お客さんも続々と来るので、いったん外へ。外では、高藤さんの従兄弟の興梠和幸さん(32歳)が、焚き火をし、直火でカッポ酒やら、カッポ鶏を作っています。カッポ鶏は、竹の中に鶏肉と椎茸やニラを入れたものに、にんにく、酒、醤油などを入れ煮た料理で、竹のエキスもしみでて、大変美味しいものです。

コップや箸、お酒やご飯、竹でさまざまなものを作る

高千穂夜神楽・高藤家

「竹があればなんでもできる」とは、岩戸で商店をしている親戚の工藤数彦さん(56歳)。どこからか竹を切ってきて、コップや箸を作ります。これには、大阪からやってきた親戚の友人も大はしゃぎ。真剣に自分の箸を作ります。火吹きで火をおこしたこともないそうで、これまた楽しそうです。

高千穂夜神楽・高藤家高千穂夜神楽・高藤家

高千穂夜神楽・高藤家高千穂夜神楽・高藤家

「うどんはいらんの?」おばちゃんに声をかけられ、すでに十杯近く食べているお兄さんが、また食べます。「ここのうどんが、いっちゃん美味い!」椎茸とカツオ節のだし汁に、鶏ごぼうの砂糖醤油の甘辛煮のトッピング。夜神楽の日のうどんは、何でこんなに美味いのか?僕も毎年、楽しみにしています。

高千穂夜神楽・高藤家高千穂夜神楽・高藤家

高千穂夜神楽・高藤家高千穂夜神楽・高藤家

高千穂夜神楽・高藤家高千穂夜神楽・高藤家

高千穂夜神楽・高藤家高千穂夜神楽・高藤家

高千穂夜神楽・高藤家高千穂夜神楽・高藤家

 それから、炭火を利用して鉄板の上で、豆腐やアゲを焼きます。にんにく醤油につけて、これまた絶品。最後は、塩ホルモンと、カッポ鶏にご飯をいれ、雑炊に。ここまで来ると、もう満足して、何も言うことがありません。山の神様と、高藤さんに感謝です。

高千穂夜神楽・高藤家

 部屋に戻ると、さっきまで飲んでいた顔ぶれと総入れ替えになっています。さすがに、高藤さんは顔が広い。お礼を言って、神楽宿の先にある千人の蔵に向かいました。

 

千人の蔵 CU−LIVE!【平井邦幸】

高千穂夜神楽・千人の蔵高千穂夜神楽・千人の蔵風景

高千穂夜神楽・千人の蔵風景高千穂夜神楽・千人の蔵風景

高千穂夜神楽・千人の蔵風景高千穂夜神楽・千人の蔵風景

高千穂夜神楽・千人の蔵風景高千穂夜神楽・千人の蔵風景

 この日の夜神楽に合わせて、友人が神楽宿の200mほど先にある千人の蔵でライブをするということで、遊びに行きました。時間は、午後11時半を回っています。月が明るくてとってもきれいです。

高千穂夜神楽・千人の蔵高千穂夜神楽・千人の蔵

高千穂夜神楽・千人の蔵高千穂夜神楽・千人の蔵

高千穂夜神楽・千人の蔵高千穂夜神楽・千人の蔵

 友人の名は、平井邦幸君(30歳)。岩手県から奥さんの実家がある高千穂に越して来て、ムラを回りながら歌を作っています。彼のムラ歌は素朴で、ストレートで、ムラのお母さんたちから、若い人にまで大好評です。県北を中心に、色んなところで歌っています。

高千穂夜神楽・千人の蔵高千穂夜神楽・千人の蔵

 今日のライブの設営や運営も、みんな仲間がやっています。『5(five)』代表の児嶋尚憲君(28歳)、飯干記章さん(36歳)、工藤鉄平君(29歳)(さっき高藤さん宅で、竹で料理を作ってくれた工藤数彦さんの息子さん)。蔵の雰囲気を活かして、なかなか良いライブ会場&バーとなっています。ちなみに、千人の蔵は、現在、児嶋君のお母さんが、そば処「天庵」を営業しています。高千穂産の蕎麦が大変美味しいお店です。

高千穂夜神楽・千人の蔵ライブ高千穂夜神楽・千人の蔵ライブ

高千穂夜神楽・千人の蔵ライブ高千穂夜神楽・千人の蔵ライブ

 僕は、焼酎を休憩して梅酒を飲みます。高千穂酒造の梅酒は日之影産。この甘ったるくない甘さが好きです。『露々』は、高千穂限定販売の米焼酎。行き着けの居酒屋の店主が言うには、店で二番目に飲まれていて、どんどん人気が出ているそうです。

高千穂夜神楽・千人の蔵高千穂夜神楽・千人の蔵ライブ

高千穂夜神楽・千人の蔵ライブ高千穂夜神楽・千人の蔵ライブ

 カウンターで隣に座った女性は、知人の娘さんでした。関東の方で暮らしていて、年に一度の夜神楽なので夫婦で帰ってきたそうです。お父さんが、帰って来いと言ったみたいですが、こういうのもいいですね。家族が集まれるのも、夜神楽のお陰です。

 平井君の歌を聞き、みんなで色んな話をしながら飲んでいたら、結局、閉店近くの午前3時となりました。

 

舞い遊ぶ神様

高千穂夜神楽・イメージ

高千穂夜神楽・イメージ

 結局、神楽宿に到着したのが午前3時半。エロティックで面白おかしくて人気の『御神体の舞』は終わっていたのですが、たくさんの人がいます。窓が閉まっているので、寒さにも耐えられます。(といっても、ダウンジャケットの上から、スノボーウェアを上下着ているのですが…。)

高千穂夜神楽・会場風景高千穂夜神楽・会場風景

高千穂夜神楽・会場風景高千穂夜神楽・会場風景

高千穂夜神楽・七貴神高千穂夜神楽・七貴神

高千穂夜神楽・七貴神高千穂夜神楽・七貴神

 舞われていたのは、『七貴神』。一般客が神楽に挑戦して観客を笑わせる舞です。ちょうど、僕の隣に座っていた埼玉県からきた青年が挑戦しました。本来なら、面をつけるのですが、なぜか素面。見よう見まねでなかなか上手に舞いましたが、なぜか素面なので大笑いでした。

高千穂夜神楽・神楽風景高千穂夜神楽・神楽風景

高千穂夜神楽・神楽風景高千穂夜神楽・神楽風景

高千穂夜神楽・神楽風景高千穂夜神楽・神楽風景

高千穂夜神楽・神楽風景高千穂夜神楽・神楽風景

高千穂夜神楽・神楽風景高千穂夜神楽・神楽風景

高千穂夜神楽・神楽風景高千穂夜神楽・神楽風景

 そうして、勇壮な『蛇切』。ヤマタノオロチをモチーフにした岩戸地区だけに伝わる演目です。高千穂夜神楽といっても、その集落の歴史によって、ずいぶん違いがあります。例えば、山岳宗教の色が濃い黒仁田集落では、ほら貝で夜神楽が始められますし、尾狩集落では、御神体の舞いがなく、田植神楽が舞われます。リズムや唄や楽器にまで、違いがあるようです。

高千穂夜神楽・蛇切高千穂夜神楽・蛇切

高千穂夜神楽・蛇切高千穂夜神楽・蛇切

高千穂夜神楽・蛇切高千穂夜神楽・会場風景

 違いがあると言えば、五ヶ村の『八鉢』。昨年も見て驚いたのですが、ここのスサノオノミコトの一物は、そそり立って立派です。出た!って感じです。スサノオの尊が、妻を迎えて大喜びするわけですが、大喜びしすぎです。そそり立たせたまま、観衆の中に入っていきます。そして、そそり立つ一物で観衆の肩を撫でたり、頭を撫でたり、前後左右のおばちゃんたち、大喜びで大笑いです。なんと、あけっぴろげなことでしょう。肩こりに効くとか、子宝を授かるとか色んなご利益があるそうなので、みんなありがたく頂戴いたします。僕も、ご利益があるように、股間をさすって戴きました。面白い光景ですね。これが、ムラ祭の楽しさです。

高千穂夜神楽・神楽風景高千穂夜神楽・神楽風景

高千穂夜神楽・神楽風景高千穂夜神楽・神楽風景

高千穂夜神楽・神楽風景高千穂夜神楽・神楽風景

高千穂夜神楽・神楽風景高千穂夜神楽・神楽風景

高千穂夜神楽・神楽風景高千穂夜神楽・神楽風景

高千穂夜神楽・神楽風景高千穂夜神楽・神楽風景

高千穂夜神楽・神楽風景高千穂夜神楽・神楽風景

高千穂夜神楽・神楽風景高千穂夜神楽・神楽風景

高千穂夜神楽・神楽風景高千穂夜神楽・神楽風景

高千穂夜神楽・神楽風景高千穂夜神楽・神楽風景

『八鉢』が終わり、四人舞いが続きます。『武智』、『火の前』、『沖逢』。さすがに、この頃になると酔いも手伝い、睡魔に襲われます。ダンダカ、ダンダカ、太鼓や笛の音を聴きながら、夢と現の間で舟を漕ぎます。ふと、目をあげると『パワナビ』の文字。『パワナビ』も、高千穂夜神楽の歴史の一部となりました。神楽唄のなんと美しいことでしょう。この夜神楽を創ってきた、先人の感性の豊かさには、身震いするような感動を覚えます。

高千穂夜神楽・神楽の様子高千穂夜神楽・神楽の様子

高千穂夜神楽・神楽の様子高千穂夜神楽・神楽の様子

 ここから日の出に向かい、神楽もいよいよその胎動が激しくなります。『手力』『鈿女』『戸取』を経て、『舞開き』でついに天照大神がこの世に光を放ちます。そして、『繰下』『雲下』でフィナーレを迎える頃には、清浄なる朝日が集落全体を包み、神楽宿に集った神様も村人も旅人も、みんな幸福の中で、安堵の表情を浮かべることとなります。

高千穂夜神楽・神楽風景

 今回の『密着!高千穂夜神楽〜私的レポート・夜神楽Night』では、そこまでお届けできなくて残念ですが(というよりも、僕がそれを味わえなくて残念)、それは味わったものしか分からない喜びがあると思いますので、興味を持たれた方は、ムラの夜神楽に一夜氏子として、参加させてもらうとよい体験になると思います。夜神楽の日ほど、朝を迎える喜びを味わえる日は、ありません。

高千穂夜神楽・イメージ高千穂夜神楽・帰路

高千穂夜神楽・帰路高千穂夜神楽・高千穂交通帰路

 午前六時過ぎに、タクシーを呼びました。月はまだ明るく、神楽宿から見える連なる山々の山際に、かすかに夜と朝の分かれ目ができ始めました。鶏が高らかに鳴きます。運転手の林さんが、「雨が降らなくて良かったですね、ご苦労様でした」。と、優しく声をかけてくださいます。空は、刻々と変化し、紫色に開けていきます。夜が開けるのも、夜神楽のお陰です。

 高千穂夜神楽に密着といいながらの私的レポートは、どこまでいっても私的なのですが、今日は午前八時過ぎから消防団の防火訓練があります。高千穂町には、消防署がなく、町の若者がそれを担います。僕も消防団の一員です。眠るか、起きておくか悩むところです。

 夜神楽で味わった喜びを生きる糧とし、そうして、ムラは継続されていきます。

 


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