むすびカフェ千人の蔵 『しいたけむすび』の旅

むすびカフェ千人の蔵の人気メニュー、
干し(乾)しいたけの『しいたけむすび』。
小さくて可愛らしいおむすびの姿になるまでには、
どんな旅があったのだろう。

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むすびカフェ千人の蔵の人気メニュー『しいたけむすび』に注目

小さくコロンと丸みを帯びた『干ししいたけ(以後レポート内は乾しいたけと表記)』をもどし、ほんのり甘く煮付けたものに柚子胡椒をトッピングした可愛らしいフォルムの「しいたけむすび」。『むすびカフェ 千人の蔵』の人気メニュー「おむすびセット」の定番となっています。もちろん単品での注文も可能で、見た目の可愛らしさと食べやすさ、親しみ深い味わいで、小さなお子さまからお年の方まで幅広い年代の方に愛されています。

このおむすびに使用されている乾しいたけは、高千穂の山の中で育てられた安心・安全・上質な原木しいたけを使用したもので、おむすびにぴったりのサイズを厳選して仕入れているのだそうです。
乾しいたけは、高千穂の郷土料理で重宝される馴染み深い素材で、煮しめやお味噌汁、お吸い物、お出汁など、大きさや種類によって用途はさまざま。

▲天岩戸温泉村『神楽の館』の行事などで作られる煮しめ料理や巻きずし等。乾しいたけや出汁が重要。

ちなみに『むすびカフェ千人の蔵』は、宮崎県内で乾しいたけ料理を提供する飲食店等10店の「乾しいたけ料理の店」として、平成28年2月に認定されており、店内でいただける多くのメニューに「乾ししいたけ」が使用されています。
そこで、このレポートでは、人気メニュー『しいたけむすび』に注目し、「乾ししいたけ」がカフェに届けられ、愛らしい姿のおむすびになるまでに、どのような旅をしてきたのか、足あとを辿ってみました。

 

店舗紹介『むすびカフェ千人の蔵』とは

まずは、しいたけむすびを提供する『むすびカフェ千人の蔵』をご紹介します。
カフェの店舗となる石蔵は、築150年以上の歴史があり、素材の石は、8万7000年前におきた阿蘇山大噴火の際にできた溶岩が固まったものです。
元は日之影町にあったそうですが、齢60歳前後のおじいちゃん・おばあちゃんが村を想って結成した『五ヶ村村おこしグループ』により、平成22年に移築されました。

移築にあたっては、移築費用を賄うために、今でいうクラウドファンディングを考案しました。村おこしグループが運営する、民宿 神楽の館、天岩戸温泉茶屋、完成後の石蔵カフェで活用できる食券10,000円分を、先に販売しました。全国に広く呼びかけ、賛同者を募ろう、そして多くの人たちの蔵への願いを形にしようということから、できた蔵を『千人の蔵』と名付けました。
現在は、先人の想いを礎にカフェを展開し、「むすびの場となるように」、地大豆や山菜を使用した、身体に優しいオリジナルメニューやスイーツが提供されています。

画像は、1日限定10食『蔵ごはん1,200円』

 

旅 その1 原木しいたけができるまで

『むすびカフェ千人の蔵』で使用されている「乾しいたけ」は、地元高千穂の原木で育ったもの。収穫後すぐに乾燥され、さらに町内の工場でひと手間かけてうま味をアップさせた極上品です。その元である原木しいたけができるまでは、どのような流れがあるのでしょうか。

原木準備

撮影協力:村おこしグループ元代表の工藤正任(くどうまさと)さん

しいたけのほだ木(植菌する木)には、主にクヌギの木を使用。約10〜15年育った適度な大きさが最もよい椎茸を育てます。もともとはシイノキに生えることから『しいたけ』と言われるようになったのだそうです。他にも、コナラや栗の木を使用される方もいるそうで、家庭や地区に伝わる方法も様々のようです。

工藤さん
「木の伐採は根元付近から木を切り倒します。 葉がついた状態で、切り倒したまま置くと、葉からだんだんと水分が抜けていき、適した状態になります。伐採作業も大変ですよ」

▲工藤正任さんからしいたけ栽培を学ぶ、むすびカフェ千人の蔵オーナーの藤木哲朗さん

乾燥の後、ようやく作業に入ります。コマ打ちの季節は、春しいたけ・秋しいたけがありますが、高千穂周辺では冬頃の作業が多いようです。
原木に専用ドリルで穴をあけ、『コマ打ち』します。この穴を空ける数は長年培った経験から生み出される感覚によるもの!

工藤さん
「実際に原木からしいたけが収穫できるようになるのは、約2年後です。ほだ木が朽ちるまで、約2〜5年続けて生やすことができます」

コマ打ちした原木を設置します。直射日光に弱いので、比較的影が多い木陰を選び、さらに、風通しを良くするために空洞をもたせながら、斜面の力を利用して組み上げます。
むすびカフェ千人の蔵でも、自家栽培の原木しいたけに取り組みはじめました。メニューに登場する日が楽しみです。

 

実際に組み上げた原木しいたけの様子

高千穂町内の山の木陰で栽培されている原木しいたけ栽培の風景。組み上げた原木は一年経つと乾燥しあがるので、縦に並べ替えます。太さも重さもあるのでかなりの労力です。2年ほど経過すると、菌が広がっているのが分かります。

ほだ木の成長から考えると、約20年ほどの長い年月が必要であり、現代の生産者たちは子孫のために新たな木々を植えたり守ったりしながら、後世に財産を残していくのです。

五ケ村村おこしグループ

お問い合せ:天岩戸温泉茶屋
住所:宮崎県西臼杵郡高千穂町岩戸58
TEL:0982-76-1213
http://suncackikaku.com/support/gokamuramuraokoshi/

 

旅 その2 乾しいたけのこだわり 五ヶ瀬物産

撮影協力:専務 飯干ツユ子さん

飯干さん
原木しいたけは、各生産者によって収穫後すぐに乾燥しなければ上質なものができないため、ほとんどの場合で、生産者によって乾しいたけにされています。そのままでも優れた品質ですが、五ヶ瀬物産では、その乾しいたけを仕入れ、遠赤外線の特殊な機械に通し、うま味をアップさせる一手間を加えています。味が深くなるだけでなく、付着した余分なものを取り除く二義的効果もあり、より安心・安全な食材としてご提供させていただいています

また、霧島山から吹き降ろされる風を受けながら作られる「切干大根」などを商品化し、自然体でありがなら徹底した品質管理は食育の分野にも注目され、給食の食材としても使用されています。

しいたけにはたくさんの種類があるので、遠赤外線処理したのちに形や種類などに仕分けされます。贈答用としてすすめる品種のパッケージは有名デパートなどに、家庭料理でおすすめする品種のものは物産館等に発送され、店頭に並ぶのだそうです。
同様に、おむすび用にマッチした味と形と大きさを厳選したものがむすびカフェ千人の蔵へと運ばれて行くのです。

飯干さん「生産者の方々、そして私たちが真心こめて製造・販売しています。しいたけは健康長寿の食材としても知られています。ぜひたくさん食べて下さい」

有限会社 五ヶ瀬物産

住所:宮崎県西臼杵郡高千穂町三田井1447番地4
電話:0982-72-2188
FAX:0982-72-4154

 

 

旅 その3 千人の蔵に到着〜しいたけむすびになる

先にご紹介したように、『むすびカフェ千人の蔵』では、地元産の安心・安全・身体にやさしい食材を意識し、地どれのお米、野菜や果物、地大豆や山菜を使用したオリジナルメニューやスイーツが提供されています。

「むすびカフェ」のテーマに添ったメニューであるおむすびは、ひとつひとつ真心こめて手づくりされています。しいたけむすびをはじめ、手づくりの具材を包んだ食事系やきな粉をまぶしたおやつ系など、たくさんの種類がそろっています。『しいたけむすび』もその中のひとつです。小さなおむすびの上に、甘く煮付けた小さな乾しいたけを乗せ、柚子胡椒をトッピング。海苔は香りと味がしっかりた天草産の海苔が使われています。この愛らしい姿に思わず笑みがこぼれてしまう方も多くいらっしゃることでしょう。

千人の蔵 おにぎりセット

▲しいたけむすび 単品150円 おむすびセット 700円〜

店長:濱田典子さんのお話し

蔵での料理は、可能な限り手づくりすることを意識しています。醤油や、食用油などの基本調味料に関しては、現時点では作ることができませんので上質なものを選び、味噌、合わせ調味料やドレッシングに関しては手づくりしています。そして、野菜だけでも満足していただけるような、『食べごたえ』にも気をつけています。
しいたけむすびは、秋のおむすびを考えていた時にうまれました。キノコを使用したいと思った時に、幼いころから、祖母が作ってくれていた乾しいたけのお寿司や、ほんのり甘い煮付けが脳裏に浮かびました。おむすびの上に乗っている柚子胡椒も自分たちで手作りしています。これも祖母が当たり前のようにしていたことを真似しました。今になって、その相性の良さにびっくりしています。乾しいたけはおむすび以外にも活用できるので、今後も、千人の蔵らしい形で乾しいたけの料理を提供できるように考えてみたいと思います

以前のレポートはこちら

むすびカフェ 千人の蔵

住所:宮崎県西臼杵郡高千穂町大字岩戸五ヶ村92-2
[電話・FAX] 0982-74-8080 [営業時間] 11:00-18:00
[定休日] 火曜日 [P] 10台
URL:http://www.amanoiwatoonsenmura.jp/cms/senninnokura/

 

 

取材を終えて

何気に普段から料理に使用している「乾しいたけ」ですが、原木を育てる期間から「生しいたけ」を収穫するまでに、単純計算で約20年ほどの長い年月が必要であり、その労力は計り知れないものでした。子孫に向けて残すしいたけの母体木用の木々には、生産者たちの未来への希望が詰まっています。

たくさんの方々に乾しいたけの美味しさを楽しんで頂けるとともに、自然に寄り添って暮らしてきた伝統的な技術を伝え、後世に広く残していける記事になれば幸いです。

 

 

アクセス 天岩戸温泉村

住所:宮崎県西臼杵郡高千穂町大字岩戸五ヶ村92-2
TEL:0982-74-8080
営業時間: 11:00-18:00
定休日:火曜日

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乾しいたけ認定店について(宮崎県)

県内の乾しいたけ料理を提供する飲食店等の10店を「乾しいたけ料理の店」として認定され、むすびカフェ千人の蔵は平成28年2月に認定を受けました。

http://www.pref.miyazaki.lg.jp/sanson-mokuzai/shigoto/ringyo/tokuyorinsan/hosisiitakeryourinomise28-ninntei.html

撮影協力

日向時間舎
代表:藤木哲朗
住所:宮崎県西臼杵郡高千穂町大字三田井823-40
電話&FAX:0982-72-6026
E-mail:info@hyuugajikan.com

取材・編集スタッフ

レポート:中本望美
撮影・制作:ヴォーク有限会社

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