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2006年01月23日

大相撲初場所を振り返る [ 大相撲 ]

 大相撲初場所は栃東の優勝で終わった。優勝はならなかったものの、白鵬の強さも光った。その陰で、場所前に注目を浴びていた朝青龍と琴欧州が優勝できなかった。混沌とした優勝争いで久しぶりに熱気ムンムンだった初場所を振り返ってみたい。

 
安定と充実の栃東

 栃東の優勝で大きかったのは、前半で取りこぼさなかったことだろう。栃東の悪い癖だ。「今場所はいいな」と思って見ていると、いきなりコロッと負けることがある。そうして優勝戦線から外れていく。今場所はこれがなくて、中日の白鵬戦を終えて8勝無敗。翌日の雅山戦は敗れたけど、これは相手が素晴らしかった。栃東の相撲内容は悪くなかった。翌日からは勝ち続け、終盤の大事な相撲も勝って優勝した。じつは15日間、悪い相撲というのは取っていない。それが優勝に結びついたといえる。
 今場所の栃東は安定していたし、充実していた。カド番なんて、早い内に忘れさせた。相撲については低く当たっての押し、おっつけ。肉体については下半身がしっかりしてぶれない。下から下からプレッシャーをかけていく相撲で勝ち星を重ねた。大事な一番でも落ち着いて勝ったように、精神面での強さも目立った。
 来場所は綱取りのかかる場所となる。ただ、自分は正直厳しいと思う。悪い癖や怪我の多い身体がそうも良くなるとは思えない。今場所と同じ相撲を来場所も15日取れるのか? もし横綱昇進を決めたとしても、不安は残る。横綱に求められるのは、あらゆる面で朝青龍に対抗できる力だから。


強さを取り戻した白鵬

 白鵬が1年前の強さを取り戻した。前半はまだ不安があった。受けがちな面があって、7日目の栃乃花戦は攻められ続けて敗れた。後半になって良くなった。立会い、左足で鋭く踏み込んでまわしをつかむと無類の強さを見せた。朝青龍戦はまわしを取れなかったけど、右肘を極めて小手投げで横綱を這わせた。
 白鵬のなかでは、琴欧州への対抗心が大きかったんだろう。1年前は白鵬が大関候補と言われていたのに、琴欧州が先に上がった。そして、CMやバラエティーなど引っ張りだこだ。面白いはずがない。「俺も大関になる」「優勝は俺が先だ」という思いが、終盤戦の気迫みなぎる相撲に表れていた。そして、その思いが強さを取り戻させた。
 白鵬は2度目の大関獲りに挑む。大阪場所がダメでも、夏場所で決めるのではないだろうか。年内の優勝もあるかもしれない。素質は文句なく横綱級だ。


ついに崩れた朝青龍

 昨年は6敗しかしなかったのに、今場所だけで4敗。千秋楽前に優勝を決めることもあったのに、今場所は14日目に優勝の可能性が消滅。千秋楽はアッサリ負けて、存在感は無いに等しかった。
 勝つ相撲の強さは申し分なかった。立会いのスピードなどは相変わらずだったし。ただ、勝負にかかる時間は長かったようだ。15日間を戦い抜くための稽古も足らなかった。稽古をしなかったのは慢心か、大偉業を達成した後のエアポケットにはまったのか。そういえば、朝青龍は負ける一番でも勝負への執念深さを見せるものなのに、今場所の敗戦はそれがなかった。
 今場所の屈辱はいい薬になると思う。モンゴルに帰りすぎだろうとずっと思っていたので。来場所の朝青龍が楽しみだ。


課題と向き合う琴欧州

 10勝5敗に終わったものの、優勝争いには絡んだ。新大関としては上々だったと思う。プレッシャーに弱いのはわかってるので、じつは2敗した時点で期待しないようにしていた。
 琴欧州の一番の課題は精神的なもの。ただ、脆さは本質的に治らないと思う。経験で補うしかない。たとえば、幕内優勝は1度してしまえばさらにできるだろう。まわしを取ると強いのが知られてるので、いかにまわしを取るか、取れないならどうするかも課題だ。大関という地位にありながら、いろんな課題を持っている。それを解決したら横綱だ。来場所は今場所よりは良くなるだろう。白鵬というライバルもいるし。


またもカド番、千代大海と魁皇

 相変わらずというか、上位の役割を果たすことがまったくなかったのが千代大海と魁皇。千代大海は玉乃島戦で負傷、魁皇は初日からまともに相撲を取れる状態ではなかった。来場所はそろってカド番、しかもワーストの9度目だ。
 ここ数年の“戦犯”を挙げるとすれば、それは大関。千代大海、栃東、魁皇――優勝争いに絡むことなく、朝青龍の独走を許した。千代大海と魁皇はいまだに戦犯であり続ける。
 千代大海は気迫を見せる相撲で、ここ最近は良かった。ただ、心で相撲を取ってる力士というのは脆いように思う。魁皇は強いときと弱いときの差が激しい。どうなんだろう、2人は。大阪場所はカド番を脱出しても、優勝争いに絡むなり朝青龍を倒すなりしない限りは存在感を残せないと思う。


潜在能力は高い露鵬と黒海

 三役を狙える地位に上がると負け越してばかりだった露鵬と黒海。琴欧州も壁にぶち当たったけど(新小結で4勝11敗)、たった1度で通過して大関になった。露鵬と黒海は置き去りにされてしまった。
 黒海といえば、馬力はあるのにバタバタした相撲でいつも呆れるばかりだった。ところが今場所は前半で朝青龍と琴欧州を投げ捨て、一気に注目の的となった。後半は“らしさ”が出たのか、終わってみればギリギリの8勝7敗。玉乃島戦などいただけない相撲もあったけど、とにかく勝ち越した。新三役とはならなかったけど、これは大きい。黒海といえば押し相撲だけど、じつは組んでも強い。粗さを落として、馬力を活かせる相撲を身に付ければ相当に強くなる……と自分は以前から思っている。
 露鵬は新三役をほぼ決めた。初日の琴欧州戦のように、上手投げで決める相撲は豪快だった。悪い癖の引きはいつもよりは少なかったように感じる。呆気なく負ける相撲はあったけど…。化ける可能性はある。上位力士で終わる危険性もあるけど…。


地力を増している安馬

 東前頭6枚目だった安馬。順調に勝ち星を重ねて早い内に勝ち越し……のはずだったのに、大関の休場もあって横綱や大関と当たるようになってしまった。先場所はこれで勝ち越しを逃した。またか、と思った。しかし、安馬は朝青龍を倒して勝ち越しを決めた。
 幕内最軽量ながら立会いから思いっきり行く姿勢、勝負際での粘り、技巧は相変わらずでファンを楽しませてくれる。今場所感じたのは、地力が増しているなと。それが表れていたのが露鵬戦と琴光喜戦。露鵬戦は立会いからの速攻で相撲を取らせなかった。そして、琴光喜戦は相手のお株を奪う突進で土俵際まで追いつめた。琴光喜と最初に対戦したときは、軽量の辛さを感じさせる敗戦だった。それが今場所は力とスピードの相撲で勝った。
 雅山戦のように体重とパワーを活かした攻めに圧倒されることもある。白鵬など優勝を争う力士との対戦にも不安は残す(まだ勝てないだろう)。でも、安馬は着実に進歩している。


場所を沸かせた時津海と北桜

 技能賞を受賞した時津海は調子が良かった。土佐ノ海戦では俵に乗った状態でカカトを浮かせて逆転勝ちという上手さを見せた。垣添戦は気迫あふれるものだった。白鵬戦こそ呆気なく敗れたものの、取組前は期待していた。
 北桜は初日から元気だった。取組がとにかく面白い。インタビューではいい人ぶりと熱さが爆発。敢闘賞受賞はならなかったものの、場所を通じて大いに盛り上げてくれた。勝てばハッスル、負ければ悔しさを表に出す姿は好きになった。


他の幕内力士

 北勝力は11日目までが下位相手とはいえ、12勝3敗の星で敢闘賞を受賞した。突き押し型で、今場所は相手を冷静に見ている面があった。白鵬戦のように呆気なく負ける悪い相撲もあったけど、栃東戦のように白熱の相撲を見せることもあった。気持ちに左右される面が大きい力士じゃないかと思う。ただ、正直言って好きではない。腰を割らず、相手に合わせない立会いが治らないから。
 琴光喜は終わってみれば8勝7敗。ギリギリの勝ち越しだった。負けたとはいえ、朝青龍戦はいい一番だったけど。このまま後輩が通り過ぎるだけの万年関脇に終わるのだろうか。
 時天空と白露山は上位で初めて相撲を取って、10番以上の大負け。壁にぶち当たった。新十両の嘉風も同じ。稀勢の里は先々場所のように大勝ちはできないけど、中位で8勝7敗だからジリジリと成長していると思う。若の里は最初の相撲を見て「平幕優勝?」と思ったけど、10勝にとどまった。下位では土佐ノ海の衰えが気になる。


活きの良かった新十両と栃乃洋

 今場所は新十両が期待に応える形となった。猛虎浪は11勝4敗。栃乃洋も倒した。豊真将は10勝5敗。決まり手は寄り切り、押し出しと前に出るものだけだ。里山は9勝6敗。小柄ながらも、ハツラツとした相撲は気持ちが良かった。決まり手はほとんど押し出しだ。千秋楽の大真鶴との一番のように、大きな力士を負かすと拍手を送りたくなる。
 ベテランで気を吐いたのが、久しぶりの十両となった栃乃洋。幕内上位にいた力士で、殊勲賞は3回受賞している。相手が弱くなったからか、状態が戻ってきたからなのか、今場所は優勝争いをずっとリードした。来場所こその思いだろう。


期待の取的たち

 幕下以下の力士でもっとも期待しているのは、幕下優勝と十両復帰を決めた把瑠都。先場所の虫垂炎さえなければ、今場所は幕内にいただろう。幕下の優勝決定戦、巨体の若ノ鵬を上手投げで倒した。あれができるのは幕下以下では把瑠都ぐらい。今はまだ発展途上中で素早く潜り込まれたときなど不安を残すけど、上で揉まれていけば三役以上は絶対いけると思う。今年はどこまで上がるか楽しみだ。優勝を逃したとはいえ、若ノ鵬もスケールは大きい。
 幕下でもう1人注目だったのが澤井。先場所は幕下優勝で、今場所は新十両を決めるかと思われたけど、序盤に連敗したのが響いて3勝4敗。入門以来初めての負け越しとなってしまった。今場所思ったのは、身体は決して大きいほうではないなと。経験、技術、身体ともにこれから。今年中には十両に上がれると思う。勝ち越した影山の存在も刺激になるだろう。
 大きくないといえば、弓取式でお馴染みの皇牙。今場所勝ち越して、来場所は十両をうかがえる位置に上がりそう。十両に上がったら弓取式はどうなるんだろう?
 自分が応援しているのはチェコ出身の隆の山と、ロシア出身の阿夢露。欧州出身といえば恵まれた体格やパワーを売りにした力士ばかりだけど、彼らはプロレスのジュニア戦士のような体格だ。筋肉質の細身のボディで、アンコ型の力士と対戦するときは針金のように見える。そんな彼らの相撲が好きだ。隆の山は幕内上位を相手に、まわしをつかんで粘りの相撲を見せてくれる。厳しいだろうけど、十両に上がる日を楽しみにしている。


活気のあった今場所

 今場所は満員御礼が6回ほどあったし、終盤はブラウン管を通して場内の熱気が伝わってきた。優勝争いが混戦となったこともあるし、今場所は面白い取組が多かった。優勝できなかったとはいえ、朝青龍と琴欧州が世間の目を向けさせたことも大きい。大相撲は面白くなっていってる段階なので、より楽しいものになると思う。気になるのは地方場所でどうか、だ。


来場所の三役、幕内⇔十両、十両⇔幕下

 早くも気になるのが来場所の番付だ。
 まずは三役について。関脇は東が白鵬、西が琴光喜となりそう。小結は旭天鵬と玉乃島が負け越し。雅山、そして新小結となる露鵬が上がる。
 幕内と十両の入れ替わりは5人か6人。幕内から落ちるのは片山、若兎馬、駿傑、土佐ノ海、栃栄。十両から上がるのは栃乃洋、潮丸、皇司、玉春日、武雄山。嘉風も落ちるなら、上がるのは琉鵬か。
 十両と幕下については5人。十両から落ちるのは途中休場の玉飛鳥、琴春日、上林、若麒麟、将司。上がるのは北勝岩、鶴竜、把瑠都、寶智山、玉力道。鶴竜と把瑠都は1場所での復帰、寶智山は念願の新十両となる。


苦しい宮崎出身力士

 宮崎出身の力士17名は勝ち越しが4人だけという厳しいものだった。今の地位から大きく番付を上げそうな力士はいない。春日国と郡山は幕下の下位なら勝ち越すことはあるけど、幕下の上位に行くことはない。つまり、それだけの力がないということだ。
 はっきり言って、宮崎出身力士に現時点では期待していない。「宮崎出身」だから、ここで取りあげているだけに過ぎない。栃光(金城)以来の関取誕生はまだまだ時間がかかるだろう。壁を突き破る力士がいれば、自分はヨイショする。

≪幕下≫東西1~60
★東30枚目 春日国(春日山) 3勝4敗
★西43枚目 郡山(三保ヶ関) 3勝4敗
≪三段目≫東西1~100
★東20枚目 千代の花(九重) 3勝4敗
☆東67枚目 男佑(二十山) 5勝2敗
★西83枚目 大瀬海(阿武松) 3勝4敗
★西98枚目 萬華城(春日山) 3勝4敗
≪序二段≫東西1~124
★東16枚目 幸の富士(湊) 3勝4敗
☆東32枚目 魁慎鵬(友綱) 4勝3敗
★西35枚目 安寿(安治川) 2勝1敗4休
☆西38枚目 時桜(中村) 5勝2敗
★東72枚目 春日湖(春日山) 3勝4敗
★西83枚目 都富士(湊) 3勝4敗
★東94枚目 玉新山(片男波) 2勝5敗
☆東102枚目 二十城(二十山) 4勝3敗
★西112枚目 勇大(陸奥) 1勝6敗
≪序ノ口≫東西1~東38
★東28枚目 岩永(陸奥) 1勝6敗
★東30枚目 金井(陸奥) 2勝5敗


デーモン小暮閣下

 忘れてならないのが、大相撲中継にゲストとして登場したデーモン小暮閣下。相撲に対する愛情、深い知識、頭のキレ、しゃべりの上手さ――どれもがバッチリだった。スポーツ番組をダメにするタレント起用が多いなか、デーモン閣下のゲスト参加はとっても楽しく、素晴らしかった。

投稿者 blogpawanavi : 2006年01月23日 03:12

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