混浴温泉世界2012(別府市)内覧バスツアーレポート!
日本一の温泉噴出量と源泉数をほこる、世界に名だたる湯のまち「別府」を舞台に繰り広げられる、3年に1度の市民主導型国際現代芸術祭、「別府現代芸術フェスティバル2012『混浴温泉世界』」。別府を愛する国内外のアーティスト達と地域のコラボレーションにより創りあげられた、8つの個性的なアートプロジェクトの魅力を一挙紹介!
▲火と水をイメージしたデザインが異なる100本の「のぼり」と、その裾に取り付けられた音色の異なる100個の鈴が、風向きや風の強さによって、様々な表情をみせてくれる。
(場所:餅ケ浜桟橋/アーティスト:クリスチャン・マークレー)
☆芸術の秋!いつもの温泉旅行とは少し気分を変えて「アートな湯のまち散策」を楽しんでみませんか?
秋も深まり、澄みきった青空が気持ちよく感じられる季節になりました!全国各地では、スポーツやアート、食をテーマにした様々なイベントが開催され、地域を盛り上げています。そんなことから、この秋の旅の計画にそうした地域イベントへの参加を計画されている方も多いのではないでしょうか?
そこで今回のレポートでは、旅とアートがひとつになった、この秋イチ押しのアートフェスティバル『混浴温泉世界2012』をご紹介したいと思います。
会場となるのは、日本一の温泉噴出量と源泉数をほこり、年間1,000万人を越える訪問者がいるという、世界に名だたる湯のまち「別府」(大分県)。
しかし別府は「湯のまち」という誰もが知るところの顔とは別に、国際芸術フェスティバルを開催することをマニュフェストに掲げ、別府を拠点に活動するアートNPO『BEPPU PROJECT』を2005年4月に発足するなど、「アートが盛んなまち」としても知られています。
この『混浴温泉世界2012』もそうした活動の一部で、3年に1度、別府を愛する国内外のアーティストと別府市民が協力し、市民主導型で開催されています。そして今年は、市内各地(浜脇地区/中心市街地/鉄輪地区/その他)に8つのアートプロジェクトを設け、別府ならではの「アートな湯のまち散策」を、58日間に渡り楽しむことができるようになっています。
ちなみに下記のレポートは、開催初日にあたる10月6日の前日、10月5日に行われた、『混浴温泉世界2012』のダイジェスト版ともいえる「内覧バスツアー」の模様で、別府市内に点在する8つのアートプロジェクトのみどころをかけ足でご紹介しています。
「湯のまち別府」ならではの風景を愛して止まない、アーティスト達の個性溢れる作品と、古きよき温泉街がかもし出す独特の空間によるコラボレーションは、まさにここでしか感じることができないもの……。
そんな街並みに興味のある方はぜひ、別府に足を運んでみてください。
(レポート:松田秀人)
▲左 ところどころに人の顔が浮かびあがった、滝のようにみえる巨大な竹細工。温泉の蒸気に含まれる成分の影響から時間が経つと緑色に変色するそう。
(場所:鉄輪地区/アーティスト:チウ・ジージエ)
▲右 商店街全体が劇場に変身!廃材を利用し製作した大がかりなセット中でダンサー達が踊る。ダンス制作や稽古の模様も一般公開される。
(場所:楠銀天街/アーティスト:東野祥子)
▲元ストリップ劇場をリニューアルして行われる、ジャンルミックスの解放区型プロジェクト「永久別府劇場・混浴ゴールデンナイト」。『混浴温泉世界2012』開催期間中の金・土・日には、ダンス、パフォーマンス、ベリーダンス、フラメンコ、音楽、エアギター、金粉ショー、その他、毎週末多数のアーティスト達が個性的なステージを披露してくれる。
(画像:The NOBEBOの金粉ショー)
別府現代芸術フェスティバル2012『混浴温泉世界』
会期:2012年10月6日(土)-2012年12月2日(日)58日間
会場:大分県別府市内各所
(浜脇地区/中心市街地/鉄輪地区/その他)
※チケットやアーティストなどの詳細は下記の公式HPにてご確認ください↓
URL:http://mixedbathingworld.com/
BEPPU PROJECT
町とアートをつなぐ「BEPPU PROJECT」
URL:http://www.beppuproject.com/
別府市観光協会『別府なび』
※別府市内の観光情報はこちら↓
URL:http://www.beppu-navi.jp/
会場となる「別府市」周辺マップ
※「印」がプロジェクトが集まる「中心市街地エリア」
別府混浴温泉世界とは
「混浴温泉世界」とは、別府で3年に1回開催される国際芸術祭です。湯けむり、混在する聖と俗、移民文化……。別府は、いたるところに不思議が顔をのぞかせる魔術的な港町です。別府の持つさまざまな個性とアーティストが出会うことでここでしか体験することができないアートプロジェクトが誕生します。
(混浴温泉世界2012公式ホームページより)
別府混浴温泉世界コンセプト
大地から湯が湧きだし、窪みに溜まる。それは誰のものでもない。
人はそれを慈しみ、自発的に守り維持する。
そして、ここに住む人も旅する人も、男も女も、服を脱ぎ、湯につかり、
国籍も宗教も関係なく、武器も持たずに丸裸で、それぞれの人生のあるときを共有する。
しかし、つかりつづければ頭がのぼせ、誰もそのままではいられない。
入れ替わり湯から上がり、三々五々、ここを去っていく。
人は必ずここを立ち去り、再び訪れる。ゆるやかな循環。
(混浴温泉世界2012公式ホームページより)
お得なクーポン型金券「BP」とは?
「BP」は、1枚あたり100円相当のクーポン型金券。11枚のうち1枚はアート専用券とし、その他の10枚はアート鑑賞やグルメ、ショッピングや温泉などに使える共通券です。BPは、店頭にBPマークを掲示した加盟店にてご利用いただけます。BPで、別府をもっと楽しんでください!
・販売価格 1,000円 (共通券10枚+アート専用券1枚=1,100円相当)
・販売期間 2012年10月6日(土)~2012年12月2日(日)
・使用可能期間 2012年10月6日(土)~2012年12月2日(日)
・販売箇所 ↓
platform04 SELECT BEPPU
platform08
やよいぷらはち
別府市観光協会駅構内案内所、ほか
使用可能な場所
・加盟店でのお支払い
・指定の温泉施設への入湯
・「混浴温泉世界2012」のチケット購入および公式グッズの購入
・「別府アートマンス」参加プログラムチケット購入及び参加料金のお支払い
・その他、指定の施設やイベントでのお支払い
BPご利用上の注意
・1BPは100円としてご利用いただけます。使用枚数に制限はありません。
・一度切り離したBPは無効となります。
・BPのご利用は有効期限内に限ります。期限を過ぎたBPは無効となりますのでご注意ください。
・100円未満の支払いには使用出来ません。端数は現金でお支払いください。
・購入後の払い戻しはお断りします。
・BPの盗難・紛失・汚損または滅失に関して、事務局では一切の責任を負いかねます。
・BP加盟店および販売箇所の情報は随時更新します。
BPマップ
BP加盟店などの詳細はこちらのマップをご覧ください。
内覧バスツアーの模様(ツアールート順)
▲スタートは日豊本線「JR別府駅」
▲改札を出たところにインフォメーションセンターがありました!
▲「JR別府駅」東口で受け付け!約70人がツアーに参加しました。
▲この日、作品の解説をしてくださった「混浴温泉世界」総合ディレクターの芹沢高志さん。
芹沢高志さんからのメッセージ「想像力の自噴地を目指して」
別府現代芸術フェスティバル2009『混浴温泉世界』が開催されてから3年が経ちます。アートを用いて場所の力を発見し、それまでの別府のイメージを大きく変えようとする試みとして、さまざまな反響を巻き起こすことに成功したと考えています。
しかしそれは、最初の一石でした。あれ以来私たちは、さまざまな挑戦を継続的に続けることで、つねに波紋と共鳴を広げようと努めてきました。そして今、第二回目となる別府現代芸術フェスティバル、『混浴温泉世界2012』を開催します。
多様性や許容を強調する基本的な考えは不変ですが、今回は内容を美術、ダンスの8つのアートプロジェクトに絞り込み、そのひとつひとつを丁寧につくり込むことに専念しました。別府八湯になぞらえれば、8つの想像力の源泉を、今、ここに、力強く掘り起こそうとするのです。
現代社会が抱える大きな問題として、肉体的な体験の希薄化とイマジネーションの希薄化があると私は考えます。ひとつひとつのプロジェクトが、すべての個人にとってかけがえのない体験となり、鮮烈な記憶を残すものとなるように、アーティストと力を合わせて作業を進めています。
加えて今回は、『ベップ・アート・マンス2012』が同時開催されます。2009年の『混浴温泉世界』において、市内の清島アパートという場所に「わくわく混浴アパートメント」というアートの解放区が出現しましたが、『ベップ・アート・マンス』はある意味で、この理念を別府市街全域に拡張するものとも考えられます。これは誰もが参加可能な市民の文化祭なのです。『混浴温泉世界2012』と『ベップ・アート・マンス2012』の相乗効果として、この時期、別府という街が巨大な想像力の自噴地となることを期待しています。
(混浴温泉世界2012公式ホームページより)
▲ツアーの手配やガイドなどでお世話になった、「BEPPU PROJECT」のスタッフ林 曉甫さん(右)と「別府市観光協会」の堤 栄一郎さん(左)。
▲芹沢さん(左)と林さん(右)の話しに耳を傾けながら、バスは最初の目的地へと向かいます。
アートスポットその1 餅ヶ浜桟橋
▲真っ青な空の下に広がる別府湾に突き出た、長さ約260m、幅5~7mの「餅ヶ浜桟橋」に到着。
PROJECT 06 クリスチャン・マークレー
第54回ヴェニスビエンナーレ(イタリア、2011年)金獅子賞(最高賞)受賞アーティスト
それぞれが違う調べを奏でる100個の鈴の音が、町を異空間に変えるプロジェクト
▲ いたる所から湧く温泉と立ちのぼる湯けむりは、ここで暮らす人々にとって入浴だけでなく、住居の暖や料理など、さまざまなかたちで活用されています。このような温泉の存在や、別府の生活に密着する自然と人間との関係性から着想した本作は、イメージと音を組み合わせた、音楽的なプロジェクトです。100本ののぼりと、その裾に取り付けられた100個の鈴が、風向きや風の強さによって、時に美しい調べを奏で、時にノイズとなり、予想のできないサウンドテクスチャーが生み出されます。それは偶然が生む産物。名も無き声が町を形作っていることを思い起こさせます。
(混浴温泉世界2012公式ホームページより)
☆クリスチャン・マークレー(プロフィール)
▲1955年アメリカ合衆国カリフォルニア州に生まれ、スイスで育つ。現在はロンドンとニューヨークに拠点を置き活動している。主な個展に、ホイットニー美術館(ニューヨーク、アメリカ、2010年)、ストックホルム近代美術館(ストックホルム、スウェーデン、2006年)、バービカン・アート・ギャラリー(ロンドン、イギリス、2005年)など多数。主なグループ展に、横浜トリエンナーレ(横浜、2011年)、リヨン現代美術館(リヨン、フランス、2007年)、ヘイワードギャラリー(ロンドン、イギリス、2000年)など多数。また、近年、クリスチャン・マークレーは、スティーブ・ベレスフォードとの共同制作によるパフォーマンスをはじめ、イ・オッキョン、シェリー・ハーシュ、大友良英らの音楽家との共同制作や発表活動を継続している。また、第54回ヴェニスビエンナーレ(イタリア、2011年)に出展した「The Clock」が金獅子賞(最高賞)を受賞した。
(混浴温泉世界2012公式ホームページより)
▲火と水をイメージしたのぼりの裾には、それぞれ異なった音色がする鈴がついており、風の強弱や方向により、様々な音色が聞こえてきます。作品タイトルにもある「火と水」が融合し、湯のまち別府の象徴でもある蒸気が生み出されるわけですが、ここ餅ヶ浜桟橋では、その蒸気を「視覚」ではなく「火と水が奏でる音の融合」で感じとることができます。
▲クリスチャン・マークレーさん Christian Marclay
【コメント】
「火山活動のエネルギーを感じるこの別府の地で、私がもっとも印象的だったのが、町のあちこちから立ちのぼる水蒸気(Steam)でした。そんな中、自然の要素である、火や水、土や空気について考えるようになったのが、この作品をつくるきっかけです。蒸気のもととなる火と水を表現するにあたり、それぞれに音色の異なる鈴をつけ、天候によって常に変化しつづける様子を音で表現できるようにしました。ちなみにこの餅ヶ浜桟橋を選んだのも、変化にとんだ風が吹く場所だからです。のぼりにプリントされた火と水の画像は私が撮影したもので、一枚いちまい違った画像を使用しています」
アートスポットその2 鉄輪(かんなわ)地区
▲湯のまち別府を代表する温泉街「鉄輪(かんなわ)地区」。古くは和銅6年(713年)の「豊後国風土記」にも記述があるとのこと。鎌倉時代には、時宗(鎌倉時代末期に興った浄土教の一宗派)の開祖一遍上人が布教の途中に鉄輪に立ち寄り、むし湯や熱の湯、渋の湯などをつくったと言われています。ちなみに「一遍湯かけ上人」(左上画像)は、ぼけが進まないよう、そして足腰がよくなるよう、治してほしいところに湯をかけるそう!
(参考:鉄輪おさんぽMAP)
▲鉄輪温泉は100℃近くある源泉が多く、温泉成分がとても多く含まれています。鉄輪の泉質で最も多い「塩化物泉」は保温効果に優れ湯冷めしにくく、また、美肌効果があるという「メタケイ酸」の含有量は他の温泉地の数倍〜数十倍程度あり、日本一とも言われています。そんなことから現在でも、温泉街散策を兼ねた2泊3日ほどの「プチ湯治」などが盛んに行われ、リピーターも多いそうです。
(参考:鉄輪おさんぽMAP)
▲中心市街地エリアの地下街で「PUROJECT 03」を手がけるシルパ・グプタさん(下記参照)の作品に繋がるメッセージ、「Where do I end and you begin」(私はどこでおわり、あなたはどこで始まる)という言葉がLEDネオンサインになっています。
PROJECT 08 チウ・ジージエ
文化や伝統をベースに現代的な表現を展開するアーティスト
温泉の噴気を利用し、大型の竹彫刻を地域に点在させる大規模なプロジェクト
▲温泉観光地「別府」を代表する、無数の湯けむりが立ちのぼる風景を有する鉄輪(かんなわ)地区。この地区一帯に、巨大な竹の彫刻群が出現します。竹細工は別府に古くから伝承されている工芸のひとつです。同じくチウ・ジージェ氏の活動拠点とする中国でも竹細工が盛んであり、今回は中国の竹細工職人と別府という地域とのコラボレーションにより、鉄輪に新たな風景を生み出します。竹の彫刻群は、温泉の噴気を覆うように設置する予定です。湯けむりは地球が生きていることの証。このプロジェクトでは、まるで命を吹き込まれたかのように、竹の彫刻がエネルギーを宿します。それは、あたかもこの地域が巨大な生命体の一部であるかのよう感じさせるでしょう。スケールの大きな考え方に基づき制作されたこの彫刻を巡り、大地のパワーを感じてみてください。
(混浴温泉世界2012公式ホームページより)
チウ・ジージエ(プロフィール)
▲1969年中国福建省に生まれ、現在は北京(中国)を拠点に活動している。アーティスト、キュレーター、文筆家、教育者のあいだを行き来しながら、写真、ビデオ、書、絵画、インスタレーション、パフォーマンスが融合する作品を発表し、境界にとらわれない活動を展開する。主な個展として、「A Suicidology of The Nanjing Yangzi River Bridge 3 – Breaking through the ice」UCCA、(北京、中国、2009年)など。主なグループ展は、「風穴 もうひとつのコンセプチュアリズム、アジアから」国立国際美術館(大阪、2011年)、「上海ビエンナーレ」上海美術館(中国、2010年)、「第54回 ヴェニスビエンナーレ」(ヴェニス、イタリア、2009年)、 「To the horizon of Shangri-La」FRAC(ロレーヌ、フランス、2007年)、「第6回光州ビエンナーレ」(光州、韓国、2006年)など多数。「上海ビエンナーレ2012」のディレクター。
(混浴温泉世界2012公式ホームページより)
▲この別府の地を「生と死を意識する場所」ととらえ、形あるものがほろびゆくことや、人の意識の変化、たとえば東洋人が西洋文化にあこがれ、本来あるべき姿が失われていくさまを描いた作品。あえて、大地が生み出した温泉の湯けむりにあたるような場所に作品を設置することで(作品の隣には下記で紹介している「竹製温泉冷却装置」があります)、時間とともに竹の表面が緑色に変色し、竹で編んだ人々の表情も変化していくことが計算されています。期間中何度か足を運び、変化をチェックしたい作品です。
竹製温泉冷却装置
▲鉄輪温泉ならでは!世界初、100℃の高熱温泉が一気に「いい湯」に冷却。天然素材で自然冷却する「竹製温泉冷却装置」(上記作品の左隣りに有ります)。この装置によって、より新鮮な100%掛け流しの温泉を楽しむことができるようになったそうです。
冨士屋ギャラリー「一也百」(はなやもも)
▲冨士屋ギャラリー「一也百」は明治32年に建てられた建物で、平成8年まで「冨士谷旅館」として営業されていたそうです。庭先には樹齢200年の「ウスギモクセイ」(上画像)があり、秋になると香り高い可愛らしい花をさかせます。ちなみにこちらのギャラリーでも、チウ・ジージエさんの作品を見ることができます。
昼食〜『ホテル風月・HAMMOND』
ホテル風月HAMMOND
住所:大分県別府市鶴見北中1組
TEL:0977-66-4141(代)
FAX:0977-66-1232
URL:http://www.fugetsu-hammond.jp/
▲海と山に挟まれた温泉地「別府」ということで、とにかく食材は豊富です。特に海産物は全国的にも有名で、これからのシーズンは「関サバ」や「ふぐ」などが旬をむかえます。しかし、鉄輪地区で食事をするのなら、やはり温泉の蒸気を利用してつくる鉄輪名物「地獄蒸し」(左)を食べておきたいですね!
アートスポットその3 トキハ別府店
▲トキハ別府店の入り口横にも、「混浴温泉世界2012」が大きく紹介されています。
PROJECT 05 アン・ヴェロニカ・ヤンセンズ
霧や光を用い、知覚的体験を誘発する作品で知られるアーティスト
商業空間の空きスペースで行われる、ドラマチックな知覚体験型プロジェクト
▲地域のシンボルとして親しまれているトキハデパートは、大分県民にとって古くからあこがれの場所でした。このプロジェクトでは、別府市最大の売り場面積を誇る「トキハ別府店」の1フロアを、霧や照明を用いてドラマティックで演劇的な空間へと変容させます。商品や物体で空間全体を埋めていくのではなく、物質的な要素を省き、光や霧などの非物質的な要素で満たされた空間を体験することで、知覚に働きかけるインスタレーションです。誰もが持つ身体や五感で感じるこの作品がもたらす体験は、年齢や性別、国籍や文化を越え、さまざまな人々の間で共有することができます。人がどこまで知覚し得るのかを探るこの作品を通じ、知覚というものがどういうものなのかを、深く自分の中に問いかけることとなるでしょう。
(混浴温泉世界2012公式ホームページより)
アン・ヴェロニカ・ヤンセンズ(プロフィール)
▲1956年フォークストン(イギリス)生まれ。ブリュッセルのラ・カンブル(国立高等視覚芸術学校)にて学び、現在も同地にて制作活動。主な個展に、「Serendipity」ウィールズ現代美術センター(ブリュッセル、ベルギー)、「Light Game」ノイエ・ナショナル・ギャラリー(ベルリン、ドイツ)、オルセー美術館(パリ、フランス)など多数。主なグループ展に、ヘイワード・ギャラリー(ロンドン、イギリス)、クレーラー・ミューラー美術館(ユトレヒト、オランダ)、ヴェニス・ビエンナーレ(イタリア)など多数。近年はアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルとのコラボレーションにより、複数の舞台作品も手がけている。
(混浴温泉世界2012公式ホームページより)
▲デパートのフロアを利用し、絵画やオブジェを展示した、ごく一般的な美術展とは違い、フロア全体をひとつの箱とし、その空間に流れる雰囲気を体全体で感じる作品です。ここでは、人間が本来持ち合わせている「知覚」を研ぎ澄ますことを体感することで、生まれた土地や言語、年齢や性別、文化や歴史をいった様々な要素を超越した感覚を共有することができるという「別府混浴温泉世界」のコンセプト(上記参照)にぴったりの作品でした。
アートスポットその4 旧地下街(ソルパセオ銀座商店街内)
▲別府市の中心市街地「ソルパセオ銀座商店街」にある「旧地下街」。現在は入り口(上画像)が固く閉ざされ入ることはできませんが、「別府混浴温泉世界2012」の期間に限り、展示スペースとして開放されています。
PROJECT 03 シルパ・グプタ
インドのアート界で今後を最も期待される若手アーティストの一人
グローバリゼーションが進む現代社会の問題を提起するプロジェクト
▲別府で最初に生まれた地下街には、かつて10軒近い料飲店が軒を連ねていました。約50年前にすべての店が撤退し、現在は固く扉を閉ざされています。その地下街を舞台に、グローバリゼーションが進む現代社会における問題を見つめ直すプロジェクトが展開されます。流れゆく時間の中で時間の中で、まるで置き去りにされてしまったかのようなこの地下街には、過去を追憶させるものがたくさん残されています。耳を澄ませば、かつての華やかだった時代の残像とともに、ささやき声が今でも聞こえてきそうです。個人の傷みや救われない思い、権威や通念に縛られもがく一人ひとりの内面を露わにし、寄り添いながら、自らを乗り越えようとするこのプロジェクトは、我々にどのような希望を与えるのでしょうか。
(混浴温泉世界2012公式ホームページより)
シルパ・グプタ(プロフィール)
▲1976年生まれ。インド・ムンバイ在住。コンテンポラリー・アートセンター(シンシナティー)、イヴォン・ ランベール ・ギャラリー(パリ)、ギャラリー・ケモルド・プレスコット・ロード(ムンバイ)、ギャラリー・アルノルフィーニ(ブリストル)、そしてアーネム近代美術館(アーネム)にて個展を催す。“Younger Than Jesus Triennale” (ニューミュージアム/ニューヨーク)、2009年リヨン・ビエンナーレ, 2008年光州・ビエンナーレ、横浜トリエンナーレ、2006年リバプール・ビエンナーレにて、またモスクワ、オークランド、ソウル、ハバナ、シドニー、そして上海での各ビエンナーレに参加する。作品は、テート・モダン、サーペンタイン・ギャラリー(ロンドン)、ダイムラー・クライスラー・コンテンポラリー(ベルリン)、サンフランシスコ近代美術館【サンフランシスコ】、森美術館(東京)、シカゴ文化センター(シカゴ)、デヴィ・アート・ファンデーション(グルガオン)にて展示されてきた。
(混浴温泉世界2012公式ホームページより)
▲小さな声が無視され伝統的な社会が壊れていく現代社会……。そんな、めまぐるしく移りゆく日々の中、時間の狭間に取り残され、我々の記憶の奥底に埋もれてしまった様々な叫び声を、時間が止まってしまった地下街に設置された無数のマイクが拾い上げようとしています。ちなみに上記の「鉄輪地区」で紹介したLEDネオンサイン、「Where do I end and you begin」(私はどこでおわり、あなたはどこで始まる)と繋がっている作品です。
アートスポットその5 楠銀天街
▲戦後は別府で最も栄えていたという「楠銀天街」。現在は空き店舗が増え空洞化が進んでいるそうです。
PROJECT 02 東野祥子
Dance Company BABY-Q 主宰・振付家・ダンサー
商店街全体を劇場に変えるプロジェクト『楠銀天街劇場』
▲「楠銀天街」は、かつては多くの店が立ち並び、観光客であふれる、別府で1番にぎやかな商店街でした。現在は時代の流れと共に空き店舗が増え、空洞化が進んでいます。「楠銀天街劇場」は、この商店街に、再び人の流れやにぎわいを生みたいという想いから計画されました。本プロジェクトでは、廃材を利用した舞台美術や映像、照明などによって、商店街が不思議な劇場空間に変わります。また、プロのダンサーや市民による、ダンス製作や稽古も公開され、「楠銀天街劇場」が日々変化していく様子やここで新たな物語が生まれる過程をご覧いただけます。会期中に製作されるダンス作品「Void the Fill」は、会期末12月1日、2日の両日にお披露目され、「混浴温泉世界2012」のフィナーレを飾ります。
(混浴温泉世界2012公式ホームページより)
東野祥子(プロフィール)
▲Dance Company BABY-Q 主宰・振付家・ダンサー。2000年に「Dance Company BABY-Q」を結成し、メンバーの個々のセンスや時代性を多角的に組み合わせた多くの作品を発表。近年は数々の海外のダンス/音楽フェスティバルなどに招聘され高い評価を受けている。ソロダンサーとしてミュージシャンやアーティストとのセッションも多数展開。スタジオ「BABY-Q Dance Lab」での、ダンスワークショップなども行う。主な受賞歴に“トヨタコレオグラフィーアワード”“横浜ソロ×デュオ+”など。地域創造現代ダンス活性化支援事業アーティスト。
(混浴温泉世界2012公式ホームページより)
URL:http://www.baby-q.org/index_pc.html
☆公演「Void the Fill」概要
「Void The Fill」はPROJECT 02「楠銀天街劇場」で、会期中を通じて製作されるダンス作品です。
日時:12月1日(土)18:00〜 / 12月2日(日)17:00〜
会場:楠銀天街
予約:不要
構成・演出・振付:東野祥子
演出・音楽:カジワラトシオ
美術:長田道夫(OLEO/RtypeL)・山田卓生(R領域/RtypeL)
映像:斉藤洋平(ROKAPENIS)・NOTONE
照明:筆谷亮也
衣装:ぺーどろりーの
楽曲提供:豊田奈千甫
☆ワークショップ開催のお知らせ
■ダンスワークショップ(経験不問)
ダンス経験一切不問!子ども、大人、シニア大歓迎のワークショップを別府で行います。詳しくは下記URLをご覧ください↓
URL:http://mixedbathingworld.com/project2/
☆お問い合わせ
別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」実行委員会事務局
MAIL:dance@mixedbathingworld.com
TEL:0977-22-3560
▲右から:カジワラトシオさん、東野祥子さん、OLEOさん、古館 健さん
▲左:東野祥子さん(振付・ダンス)右:カジワラトシオさん(音楽・演出)
【東野さんコメント】
「商店街を劇場化するというアイデアは、このシャッター商店街に命が吹きこまれていく姿を、観光客だけでなく地元の方々にもみせたかったからなんです。だから廃材を使ったアートを組み上げるところから、この別府混浴温泉世界の最終日にあたる12月1日・2日に行うVoid the Fillの公演に向けての稽古風景も全てオープンでご覧頂き、私達のエネルギーを体感していただけたらと思います。また期間中には、初心者の方でも子どもさんでも気軽に参加していただけるダンスワークショップを開催しています」
【カジワラさんコメント】
「廃棄処分されてしまったもの達に、どうやって命をふきこみ、エネルギーを循環させていくのかを感じてもらうのがこのプロジェクトのテーマです。廃材集めからここまで創りあげるのに約1ヶ月間かかっていますから、その間に地元の方々とも親しくなり、中には、この活動を見ているうちに、『ここでお店をやりたくなりました』なんて話しがあがったり、とても嬉しく思います。ちなみに夜になって照明の効果がでると、商店街の表情ががらりと変わるので、ぜひ昼と夜の両方を見ていただきたいと思います」
アートスポットその6 浜脇地区
▲JR日豊本線「東別府駅」を下車し徒歩5分。別府温泉発祥の地と言われ、浜から温泉が噴き出る様子から「浜わき」と名付けられた海沿いの温泉地。かつては飲食店や遊郭がひしめく歓楽街で、とても賑わっていたそう。まちのあちこちに、当時を感じさせてくれる建築物が残っています。
PROJECT 01 廣瀬智央
繊細で完成度の高い造形作品と、それを配置し鑑賞する緊張感のある空間からなるインスタレーション作品などを作成
古い空き屋を神秘的な作品によって再生させるプロジェクト
▲別府温泉発祥の地ともいわれ、昔ながらの風景や慣習が今も息づく浜脇地区。その一角にある築100年を超える長屋を、地元の建築家と共にアーティストが作品空間として再生させるプロジェクトです。建物の外観や、そこに蓄積されてきた記憶や息吹をそのまま残しながら、見たり触れたり、五感で感じることができる作品空間として再生します。作品と場との対話から生まれる神秘的な空間をお楽しみください。このプロジェクトは、長屋の所有者である個人の協力、資金提供によって実現しており、会期後は、貸し切りでゆっくりご鑑賞いただけるよう、滞在型の作品として公開する予定です。アーティストにとって刺激的な作品制作の場を提供すると共に、地域に残る大切な空間や記憶の残し方、再活用の在り方の一つのモデルとなることを目指しています。
(混浴温泉世界2012公式ホームページより)
廣瀬智央(プロフィール)
▲1963年東京生まれ。ミラノを拠点に活動。多摩美術大学卒業。イタリア政府給費奨学生として渡伊。ポーラ美術財団の研究助成でミラノに滞在。ミラノ・ブレラ美術アカデミー修了。文化庁在外研修員としてニューヨークに滞在。日米財団のフェローとしてバーモント州のVSCに滞在。「パラディーゾ展、水戸芸術館、水戸」、「先立未来展、ペッチ現代美術館、プラト、イタリア」、「2001展、広島市現代美術館、広島」、「ネオ・ポップ展、シドニー現代美術館、シドニー、オーストラリア」、「クワットロ・ディメンショーネ展、バンカ・アクロス財団、ミラノ、イタリア」など世界各地で展覧会多数。インスタレーションや彫刻、絵画、写真などさまざまな媒体を使い、旅や移動をテーマに異なる民族や文化間に潜む共通領域や差異、日常生活の小さな事象や豊かさを可視化する作品を発表する。
(混浴温泉世界2012公式ホームページより)
URL:http://www.milleprato.com/
▲「見た目は築100年の長屋だけれど、中に入ってみると驚いてしまうような空間をつくりたい!」という廣瀬さんのコメント通り、自分の中にある先入観をあっさりと壊してくれる作品です。建物はとても古いけれど、浜脇という土地が放つエネルギーは、時代に関係なく、今も地中から溢れつづけている……。そして、それが青い光となり建物に染み付いている。そんなふうに感じられる空間でした。
アートスポットその7 別府タワー
PROJECT 07 小沢 剛
独自のユーモアと批判精神で自らの歴史やアイデンティティを考察するアーティスト
町のランドマークを舞台に近代について再考するプロジェクト
▲別府のシンボルであり、国内で3番目に古い観光塔「別府タワー」を舞台に、近代について再考するプロジェクト。旧約聖書「バベルの塔」※を下敷きに、タワーの広告ネオンサインが点灯する順番を変えることによって、さまざまな言語による単語が紡がれていきます。単語は、日本語以外に別府市に住む外国人の母国語から抽出されます。自分にとって理解できない単語であっても、少なくとも一人はそれを理解できる人がこの町に住んでいるのです。複雑化する現代社会の中で、コミュニケーションの重要性や他文化の共生による理想的な未来像を想うアーティストのメッセージが、夜間のみ町に優しく灯ります。
※旧約聖書の創世記にある伝説上の塔。人類が天に達するほどの高塔を建てようとしたことに神が怒り、単一言語であったそれまでの言葉を混乱させて互いに通じないようにした。そのため人々は各地に散ったという。
(混浴温泉世界2012公式ホームページより)
小沢 剛(プロフィール)
▲1965年東京生まれ。東京芸大在学中から、風景の中に自作の地蔵を建立し、写真に収める《地蔵建立》開始。 93年から牛乳箱を用いた移動式ギャラリー《なすび画廊》や《相談芸術》を開始。 99年より日本美術史への皮肉とも言える《醤油画資料館》、2001年より女性が野菜で出来た武器を持つ写真シリーズ《ベジタブル・ウェポン》を制作。04年に個展「同時に答えろYesとNo!」(森美術館)、09年に個展「透明ランナーは走りつづける」(広島市現代美術館)。
(混浴温泉世界2012公式ホームページより)
▲側面に文字広告がついている「別府タワー」を見て、「バベルの塔」の話しを思い浮かべたという小沢さん。様々な国の単語をあえてランダムに表示させることで、むしろ言語や文化の多様性を肯定し「それらを越える共感や共鳴が起こることを想像したい」と語っています。そんなこともあってか、中心市街地の商店街の店先には、各店舗がそれぞれの特色を活かした個性的な手作り別府タワー『見立てタワー』(下記)を飾り、観光客の注目を集めています。
見立てタワー(手作り別府タワー)を探せ!
▲「見立てタワー」を見ることができる店舗を紹介した、こんなマップを発見しました!
▲散策途中に発見できた「見立てタワー」の一部です!
アートスポットその8 永久別府劇場
▲別府の中心市街地の繁華街にある市民劇場「永久別府劇場」。元々は「A級別府劇場」と名前のストリップ劇場だったそう!『混浴温泉世界2012』開催期間中はこの劇場で、ダンスや音楽など、毎週末様々なショーを見ることができます。
PROJECT 04 混浴ゴールデンナイト
「混浴ゴールデンナイト!」は、会期中毎週末、週替わりのプログラムで開催されます。
元ストリップ劇場をリニューアルして行われる、ジャンルミックスの解放区型プロジェクト
▲2009年、第一回目の「混浴温泉世界」の閉幕後すぐにその幕を閉じた大分県唯一のストリップ劇場「A級別府劇場」。この空間をリニューアルし、前衛的な文化発信拠点として再生させるプロジェクトです。建築家集団「みかんぐみ」と地域のアートNPOが、この数年間リニューアルに向けて準備を重ねてきました。今回、この特徴的な空間は週末毎(毎週金・土・日)に開催されるジャンルミックスの解放区となります。ダンスや演劇、DJや音楽ライブから、今では見られなくなった日本の伝統的な金粉ショーや見世物小屋的なパフォーマンスまで、多彩で、聖と俗が渾然一体となった空間がかりそめに生まれます。平日(月・火・水)はパフォーマンス公演はございませんが、館内をご鑑賞いただけます。
(混浴温泉世界2012公式ホームページより)
(画像は上記「アートスポットその5」でもご紹介した東野祥子さん)
※下記画像は、10月5日「内覧バスツアー」時のプログラムです。
THE NOBEBO
▲身体に金粉をまといパフォーマンスを行なう「金粉ショー」は各地の温泉旅館やキャバレーなどで行なわれていましたが、最近なかなか見ることが出来なくなりました。今回「混浴ゴールデンナイト!」を開催するにあたり、昔ながらの金粉ショーを復活させます。男性1名女性2名の計3名で構成される金粉ショーチーム「The NOBEBO」は「混浴ゴールデンナイト!」の全日程に出演します。
(混浴温泉世界2012公式ホームページより)
大友良英
▲音楽家 /プロデューサー。1959年横浜生れ。十代を福島市で過ごす。常に同時 進行かつインディペンデントに多種多様な作品をつくり続け、その活動範囲は世 界中におよぶ。映画音楽家としても数多くの映像作品の音楽を手がけ、その数は 7 0 作 品を超える。近 年は「アンサンブルズ」の 名のもと様々な 人たちとのコラボ レ ー シ ョ ン を 軸 に 展 示 す る 音 楽 作 品 や 特 殊 形 態 の コ ン サ ー ト を 手 が け る 。震 災 後は福島と東京を行き来しプロジェクトFUKUSHIMA! を立ち上げ奔走中。著書 に『MUSICS』(岩波書店)、『大友良英のJAMJAM日記』(河出書房)、『ENSEMBLES』(月曜社)『クロニクルFUKUSHIMA』(青土社)等。
(混浴温泉世界2012公式ホームページより)
(この日はクリスチャン・マークレー氏との特別パフォーマンスを実施)
東野祥子
▲Dance Company BABY-Q 主宰・振付家・ダンサー。2000年に「Dance Company BABY-Q」を結成し、メンバーの個々のセンスや時代性を多角的に組み合わせた多くの作品を発表。近年は数々の海外のダンス/音楽フェスティバルなどに 招聘され高い評価を受けている。ソロダンサーとしてミュージシャンやアーティストとのセッションも多数展開。スタジオ「BABY-Q Dance Lab」での、ダンスワークショップなども行う。主な受賞歴に“トヨタコレオグラフィーアワード”“横浜ソロ×デュオ+”など。地域創造現代ダンス活性化 支援事業アーティスト。
(混浴温泉世界2012公式ホームページより)
URL:http://www.baby-q.org/index_pc.html
※出演者詳細はこちら↓
URL:http://mixedbathingworld.com/project4/
※日程・公演概要・予約などはこちら↓
URL:http://mixedbathingworld.com/category/event/performance/
別府のまちを楽しむ関連情報!
さて、いかがですか?「混浴温泉世界2012」ならではの空気をほんの少しだけでも感じていただけたでしょうか?今回は、別府市内に点在する、8つのアートプロジェクトのみどころをかけ足でご紹介したわけですが、世界に名だたる湯のまち別府と世界で活躍するアーティスト達とのコラボレーションなだけに、やはり実際に会場に足を運んでいただき、土地とアートから湧き出るエネルギーそのものを感じとっていただけたらと思います。
そこで「混浴温泉世界2012 」開催の期間中、もっと別府の町を楽しんでいただけるよう、様々な関連情報を下記にてご紹介いたします。
もっと町を楽しむ情報
URL:http://mixedbathingworld.com/howtoenjoy/
ベップ・アート・マンス 2012
「ベップ・アート・マンス」とは?
別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」実行委員会(以下、実行委員会)が主催者となり、別府で開催される様々な文化事業を紹介し、開催を支援する登録型のプラットフォーム事業です。
小規模文化団体の育成・支援を目的に広報協力、事務局業務代行、企画立案から実現に向けたサポートを行うことで、市民の主体的な参画を促進し、別府市における芸術文化の振興と活力あふれる地域の実現を目指します。本年度は別府現代芸術フェスティバル2012「混浴温泉世界」との同時開催を図り、10月6日(土)~12月2日(日)の58日間に会期を拡大して開催いたします。
(ベップ・アート・マンス2012公式ホームページより)
会期:2012年10月6日(土) – 12月2日(日)
会場:別府市内各所
主催:別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」実行委員会
URL:http://www.beppuartmonth.com/
BEPPU ART AWARD 2012 グランプリ展覧会
既存の芸術領域を拡張し、独創的で挑戦的な作品」をテーマに作品を公募したBEPPU ART AWARD 2012。登録者数110名、応募総数67件の中から、グランプリに決定した「加瀬才子」氏のグランプリ受賞展を開催。
▲「Life-time Project」左:会場 右:加瀬才子さん
BEPPU ART AWARD 2012 グランプリ展覧会「Life-time Project」
「Life-time Project」は、生あるものの死にゆく運命をテーマに制作を続ける加瀬氏の現在進行中の作品です。自身の手足の爪や毎年末に剃り落とす髪、火葬後に集められる遺骨を主な素材とし、自らの死後に催される展覧会が、この作品の完成形となります。生と死はすべての生き物に共通する基本的な事実であり、死はすべての命に平等に訪れます。本作品はそれを肯定的に捉え、一人間の生涯を通じ、生きる事や死ぬ事を問いかけ続けます。
(BEPPU PROJECTホームページより)
加瀬才子プロフィール
日本で経済学を学んで金融関係に就職後、シカゴ美術館付属美術大学大学院(SAIC)で全額奨学金を支給され、修士号取得。現代美術に触れ、絶大な衝撃を受ける。全く異なる老若男女が作品を通して繋がる姿から、今後の人類の営みに希望を見いだした。土、髪、種などを使い、パフォーマンス、インスタレーション、ドローイングを中心に活動。生涯をかけ、決して答えが出ないであろう「生きる事」「死ぬ事」を問いかける作品を制作し続ける。
(BEPPU PROJECTホームページより)
日時:9月29日(土)~10月21日(日) 火曜日休廊
10:00 – 19:00 ※最終入場18:30
会場:platform02(別府市元町6-21)
料金:無料
国東半島アートプロジェクト2012
「国東半島アートプロジェクト」とは?
いにしえから瀬戸内海と大陸を結ぶ交易の要所であった大分県国東半島。両子山を頂点として放射状に伸びる谷間に、独自の文化や多くの奇祭が根づくこの半島を舞台に「国東半島アートプロジェクト2012」を開催します。旅の入り口は、アーティストが空き屋をリノベーションした「いえをつくる」。現代の異人=アーティストの自由な発想と場の力とが出会い、作品空間へと変わる空き家は、訪れる者を異世界の旅へと誘うでしょう。
「アートツアー」では、「いえをつくる」の鑑賞の他に、古代から多くの修行僧が訪れた地を舞台に繰り広げられるパフォーマンス作品の鑑賞や、平安時代より受け継がれる修行「峯入り」を体験するトレッキング、この地域ならではの食なども体験でき、国東半島の魅力により深く分け入ります。
また、写真家・石川直樹氏が一年を通してさまざまな角度から国東半島を捉え、その本質を追求した写真展や、周防灘に臨む岬一帯での恒久設置プロジェクト「香々地プロジェクト」など多彩な事業を展開します。
期間中に国東半島を巡れば、豊かな恵みと文化、そしてとっておきの芸術体験が待っています。ぜひ足をお運びください。
(国東半島アートプロジェクト2012公式ホームページより)
主催 : 国東半島芸術祭協議会(構成団体:大分県、豊後高田市、国東市)
会期 : 秋期 2012年11月3日(土) ~ 25日(日)
春期 2013年2月下旬 ~ 3月中旬
会場 : 豊後高田市、国東市 各所
料金 : 無料(ただし、アートツアーは別途料金が必要となります)
行っておきたいお店『PUNT0 PRECOG』(プント プリコグ)
『混浴温泉世界2012』の開催期間(2012年10月6日〜2012年12月2日の58日間)にあわせて、東京を拠点に、舞台美術をはじめ音楽やアートに関わるイベント等を企画・運営する会社「株式会社precog」の代表・中村 茜さんと、京都在住の建築家・仲野亜紗さんプロデュースによるお店『PUNTO PRECOG』(プントプレコグ)が別府中心市街地にオープンしています。
店舗は、東京で活躍中のyoyo.さん(ベジしょくどう)を料理長に迎え、新鮮野菜をたっぷり使用した「べじごはん」が食べられるカフェ&バーと、中目黒のショップ 「凹boco」による、若手デザイナーの新作を中心にセレクトしたショップにわかれており、『混浴温泉世界2012』や『ベップ・アート・マンス2012』の会場を訪れた方々の交流の場として活躍しています。
PUNTO PRECOG
PUNTO PRECOG(カフェ・ショップ共通)
住所:大分県別府市元町3-5
※別府駅から徒歩5分「西法寺通り」から「新宮通り」に入り、下って右手
電話:080-3382-6472
店舗詳細及びアクセス等はこちら↓
URL:http://puntoprecog.jp/
【名前の由来】
『PUNTO』とは、スペイン語で『基地』という意味。『PRECOG』 とは、映画『マイノリティーリポート』から拝借した先見予知能力者の名前。英語『precognition』が語源。スペインの養分をたっぷり吸って活動 してきた建築家・仲野安紗と、precog という会社を運営している中村茜のプロデュースで立ち上げたことから、この名前に決まりました。
(PUNTO PRECOG公式ホームページより)
Cafe(アート、酒、ベジごはん)
営業時間:ランチ 12:00〜17:00 バー 20:00〜24:00
定休日:火曜・水曜
▲東京を拠点に活動をしている「ベジごはんで」おなじみの料理人「YOYO.さん」(上画像 右:yoyo.さん、左:山形春華さん)をがつくる、アイデアたっぷりの「新感覚野菜料理」を楽しむことができる期間限定カフェ。中でも人気は、野菜の可能性を120%引き出し、メインから副菜、サラダのすべてを野菜のみで構成した「ベジプレート」(日替わりベジランチとして提供)。その斬新な味と食感は料理というよりは、まさにアート!今回の『混浴温泉世界2012』のコンセプトにぴったりのメニューだと思います。
▲日替わりベジランチ(850円)。内容はおかず3〜4品、玄米ごはん、スープ、サラダ。南インドのテイストをたっぷりと効かせた、ここでしか味わえないスパイシーな味わいが印象的!
(画像:カリフラワーのフリット、青茄子とピーマンのスパイス炒め、南瓜の甘酢漬け、おじゃがの豆乳スープ、玄米ごはん、サラダ、)
▲南瓜の寒天プリン(300円)。南瓜本来の甘味とカラメルソースの香ばしさが合わさった大人のプリン!
▲TEKUTEKUブレンド「Tb」(400円)。「別府旅手帖」と「KAMEコーヒー」のコラボレーションから生まれたブレンドコーヒー。
Shop
営業時間:11:00〜18:00
▲中目黒のショップ 「凹boco」のセレクトによる、若手デザイナーの新作を中心に、別府の風景にぴったりな洋服、アクセサリー、雑貨などを販売。
▲左:株式会社precog代表・中村 茜さん、 右:ショップスタッフのケティング・ナナさん
▲イチ押しブランド「coci la elle」(コシラエル)。デザイナー「ひがしちか」さんによる手作り日傘ブランド。2010年からスタートし、渋谷の「NO.12 GALLERY」や「国立新美術館」での展示販売を実施。2011年には自身初となるスカーフ(上)、さらに2012年には雨傘をリリース(左下)。個性的な絵柄とやわらかな質感が特徴。またスカーフアレンジのアイデアがつまった「SCARF for you!!」(右下)という写真集には、「coci la elle」のスカーフが豊富に掲載されています!
株式会社precog 代表 中村 茜さん
▲左:株式会社precog代表・中村 茜さん
Q:元々東京で活動をしていた中村さんですが、何故、別府でお店をしようと考えられたのですか。
「昨年の東日本大震災があった後、私は東京から一時的に京都に移りました。その時は東京もどうなるかわからない状況だったので移住を決意し、移住先でも現在のような活動できるところはないかと色々探していたのですが、あまりいい土地がありませんでした。そうこうしているうちに、私が運営している『株式会社precog(プリコグ)』がプロデュースしている演劇カンパニー『チェルフィッチュ』主宰の岡田利規が熊本に移住したんです。その話をきいた時に、私の中に九州という選択肢 が生まれました……。そして、ふと大分県の別府市にはアートNPO『BEPPU PUROJECT』が地域ぐるみで様々な芸術活動を行っており、今年は3年に1度開催されているアートフェスティバル「混浴温泉世界2012」が行われていることに気づき、あそこなら現代芸術の素地もあるし、意識を共有できる方々がいるかもしれないと思い、混浴温泉世界の実行委員である『BEPPU PUROJECT』に連絡を取り、別府の視察をさせてくださいと申し込んだのです」
Q:実際に別府へ足を運ばれてからの感想は?
「みなさん、すごく歓迎してくださって、現地についたら若い学生さん達が2日間くらいかけて街の中を案内して下さりました。若い人達が現代アートについて一生懸命学んで発展させようとしている姿に本当に感動して、次第に別府でなにかやってみたいという気持ちが高まっていったんです。その後、別府を訪れては物件を探してというのを繰り返し、いまの場所を見つけ、ここで何かやってみようと決意しました。私が物件を探してる最中も『BEPPU PUROJECT』のスタッフさん達が私のために物件を探してメールを下さったりしたのも本当に嬉しかったですね。ちなみに、この『PUNTO PRECOG』の建物(カフェ)は元々韓国料理店だったのですが、知り合いの建築家と熊本の大工さんが2週間住み込んで改築してくださいました」
Q:プントプリコグについて教えて下さい。
「基本的には、フリースペースになっていて、ここでなにかやってみたいと申し出があったときにその方に使っていただこうと思っています。しっかりとした方向性というのはこれからなのですが、以前試しに一日だけカフェを行ったときに色々なお客さんが来てくださって、そこで素敵な出会いがいくつもありました。今はそういう人から人へ関係が広がっていくのを楽しんでいる段階で、今後は、カフェをやりたい方がいたらカフェをやるし、バーをやりたい方がいた時にはバースペース。他にも展覧会や古本市など、その時の状況によってそれぞれのクリエーター達が自分たちで場所を作って、自分たち流にオープンしてもらえればと思っています。ちなみに『別府混浴温泉世界』の期間中は、カフェ&ショップという形でオープンしています」
Q:今後の活動についてお聞かせください。
「まだアイデア段階なのですが、このカフェが成功したら、この先もずっとオープンしていきたいと思っています。例えば世界各地の料理家の方々を招き入れて、2ヶ月限定など期間を決めてコラボレーションするのも面白いと思っています。最初はインドのシェフの ◯◯さんとコラボして、2ヶ月たったら次はオランダのシェフの○○さんとコラボレーションしてみるといったような感じでやってみたいです!」
Q:最後に一言お願いします。
「九州で自分の力を試したい料理家さんや、自分ならではのお店を持ちたいと考えている方々がいらっしゃいましたら是非お気軽にご連絡くださいね!様々なアイデアを出し合い、形にできればと考えています!」
【中村 茜さんプロフィール】
2003年設立し、2006年株式会社precogとなる。プリコグとはpre(前)とcognition(認識)からなる「予知」という語を人称形らしく変型させた造語で、precog《予知能力者》という意味を持つ。
舞台芸術を主軸としながらも音楽や美術ジャンルなどを横断したり融合させたりしながら、革新的なアーティストのマネージメントや、プロジェクトのプロデュースを行う。従来の常識を覆すような表現活動を取り扱い、とくに日本における身体表現の新しい輪郭を示すようなライブパフォーマンスに力を入れている。
わたしたちは、常に新しい表現の”場”を作り、例えば 発表の場を考えても、ジャンルによる規定(演劇なら劇場、音楽ならライブハイスなどの)に捕われず、様々な方法で特有の化学反応を起こしていくことを目的としている。
中村茜(Akane Nakamura)
プロデューサー。株式会社precog代表。
NPO法人ドリフターズ・インターナショナル理事。
日本大学芸術学部非常勤講師。
http://precog-jp.net
http://drifters-intl.org
http://snac.in
株式会社precog
東京都渋谷区神宮前1-10-34 305号
Work:03-3423-8669
Fax:03-3423-8669
URL:http://precog-jp.net/
E-mail:punto@precog-jp.net
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