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2004年04月19日
ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ [ ビデオ/DVD/ミュージカルmusical ]
Hedwig and the Angry Inch
2001年/米 1時間32分 カラー
ビデオ・DVD
監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル
脚本:ジョン・キャメロン・ミッチェル
音楽:スティーヴン・トラスク
原作:ジョン・キャメロン・ミッチェル/ スティーブン・トラスク
キャスト:ジョン・キャメロン・ミッチェル、 ミリアム・ショア、 スティーヴン・トラスク
「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」は「人間はもともと4本の手、4本の足、2つの頭を持った生き物だったのだが、神によって落とされた稲妻で2つに引き裂かれた。その時の片割れを探してさまよう、寂しい二本足の人間達。」というプラトンによる「愛の起源の物語」をベースにし、ジョン・キャメロン・ミッチェル自身が主演・監督・脚本・演出を手掛け、作品内でもヘドウィグのバンドのギタリストとして出演しているスティーヴン・トラスク(グリーン・デイ、ジョーイ・ラモーン、デビー・ハリーなどのプロデュースを手掛ける現役のミュージシャン)が音楽を担当し、オフ・ブロードウェイ(下記参照)で2年半のロングランを記録したロックミュージカルを映画化したものです。公開当時、デビッド・ボウイはグラミー賞をすっぽかしてまで観賞し、マドンナが楽曲(ミッドナイト・レディオ)の使用権利を申し入れた!などの話題もあった作品です。
■ストーリー
かつてベルリンの壁が存在した共産主義体制下の東ドイツで自由の国アメリカを夢見ていた少年ハンセル=ヘドウィグ(ジョン・キャメロン・ミッチェル)は複雑な家庭環境の中、親子3人で暮らしていた。父親に性的虐待をうけながらも耐えつづける毎日・・。いつしかアメリカ軍のラジオから流れるロックミュージックがハンセル少年の心の支えになっていた。やがて男性として成長するものの、女性的だったハンセルはある日、ホモセクシャルの米兵にみそめられ結婚をせまられる。ところが「男のままではあの壁は越えられない」という米兵に対し、ハンセルの母親は「自由を手に入れるにはそれなりの代償が必要」と、東ドイツ脱出のために性転換手術と名前(ヘドウィグと変名)の変更をすすめる。しかし、不運にもヤブ医者の手術により、彼の股間には1インチ(約2.5cm)のシコリ(怒りの1インチ/アングリーインチ)が残ってしまうことに・・・。なんとか米兵と渡米するも、夫?は新しい美少年をみつけヘドウィグの元をさってしまい、同時に目の前ではベルリンの壁崩壊のニュースが流れる・・・。失意の中どうにかバンドを結成し、様々な仕事をするヘドウィグだが、ある事がきっかけになりロックスターに憧れる17歳の美少年トミー(マイケル・ピット)に出会い心を通わせる・・・。やがてヘドウィグは自分の片割れのごとくトミーに愛情をそそぎ、ヴィジュアル的なアドバイスをしたり楽曲を提供するなどしつつ2人でライブ活動をはじめる。やがてトミーからも信頼をよせられるが、ある日を境にトミーは彼女を裏切り、楽曲を利用し一躍ロックスターへと登りつめる。一方ヘドウィグは、バンドメンバーであり今の夫?でもあるイツハク(ミリアム・ショア)やギタリストのスキシプ(スティーヴン・トラスク)と共に自身のバンド「アングリーインチ」を従え、ストーカーのようにトミーのツアー先についてまわり、目と鼻の先のドライブインやレストランでライブを行い、歌やトークで自分の立場を主張するが、やがて資金は底をつき、メンバーともギクシャクしはじめる。そんな毎日にうんざりし、売春婦のように街角にたたずむヘドウィグの前に超大型のリムジンで現れたのは、なんとロックスターとなったトミー・ノーシスだった。
■レビュー
作品自体から「ロッキー・ホラー・ショウ/1975年 米」(下記参照)を彷彿とさせますが、来日時の監督自身のインタビューでは「ロッキー・ホラー・ショウは学生の頃見たけど特に大ファンだったというわけではなく、どちらかというとオール・ザット・ジャズやキャバレーが好きでした。もちろんロックも好きでしたが、どちらかと言えばミュージカルに傾倒していました。音楽を担当したスティーヴン・トラスクはルー・リードやデヴィッド・ボウイ、イギー・ポップのようなミュージシャンが好きなので、ふたりを合わせればよい音楽がひととおり揃うのではないかと思いました。この映画ではグラムロックだけでなくカントリーやパンクなども使われており主人公が子供のころにベルリンの壁を通して聞いた音楽がいろいろ凝縮されているのですが、当時それらは自由の象徴でもあったのです。」と語っていました。
主人公のハンセル=ヘドウィグは少年の頃、ベルリンの壁の向こう側で、米軍のラジオから流れる自由の象徴を聞きながらロックンロールと自由に憧れ、それを手に入れる代償として、性転換手術の失敗による股間のシコリ「怒りの1インチ/アングリーインチ」を背負って生きていくことになるわけですが、この映画のテーマともなっているプラトンの愛の起源によると元々人間は4本の手、4本の足、2つの頭を持った生き物で、神様の放った稲妻によって引き裂かれたそうで、人間の意志でバラバラになったわけではないそうです・・・・・。そんなことから、この映画ではその象徴として引き裂かれたベルリンの「壁」が登場し、また、男と女の間にヘドウィグという存在(壁)がベルリンの壁同様に、象徴として描かれています。オープニングで流れる「打ち壊せ」ではベルリンの壁に見立てた落書きだらけのマント(上記画像参照)を広げたヘドウィグがワイルドなロックをコミカルなパフォーマンスで歌い上げます。なにせ映画のオープニングということもあって、ヘドウィグの生い立ちなどもわからず「壁と橋とはそう違わない、私を打ち壊せ!」と叫ぶシーンもはじめて見たときは、ただ漠然とそのパフォーマンスを楽しむだけでコレといって特別な印象はもちませんでしたが、再度見返してみると、「壁と橋はそう違わない、私を打ち壊せ!」というフレーズがとても印象的で、男と女、自由と束縛、戦争と平和、その他、様々なものの狭間にある見えない「壁」を打ち壊さない限り、世界中に散らばっている自分のカケラ探しは始まらない!とヘドウィグ自身が自分に向かって言っているように感じました。橋は渡る意志があればいつでも向こう側に渡れますが、壁が立ちはだかれば容易には渡れません。しかし、考え方によっては例え橋がかかっていたにせよ、向こう側に渡る意志(勇気)がなければ壁であれ橋であれ、どちらも同じようなものなのでしょうね?
「打ち壊せ」から物語は過去にさかのぼりますが、ヘドウィグ自身、少年ハンセルだった頃よりホモ・セクシャルではあったにせよ、いくら自由と引き換えとはいえ、理解あり過ぎる?母親に「自由を手にいれるには、それなりのリスクが必要よ」と性転換手術と変名を進めらるまでは自分自身をちょん切ってしまうなんて考えてもみなっかたことでしょう。そしてハンセルはヘドウィグとなり、手術の失敗により本当に大きなリスクを背負ってしまったわけですが、これは彼(彼女?)が橋を渡ろう、壁を壊そうと行動を起した勇気の証とともに、つねにヘドウィグを夢から現実へひきもどすものでもあります。その直後に、あの絶対的だったベルリンの壁が崩壊されるところをTVで観ながら呆然とするシーンがありますが、心身共に大きなリスクを背負ってしまい傷をうけながらも歌いつづけるからこそ湧き上がってくる人間的パワーと男女を超えた説得力を感じる反面、今の自分を直視できず、美しい衣装や派手なカツラで過去を忘れようとしている寂しさのようなものも伝わってきます。そんなことから、2回目の観賞ではオープニングの「打ち壊せ」が「誰かこんな私をぶち壊してくれ!」とも聞えるのです。「美しい死体」では「体中縫い目だらけ、カミソリで切られた傷跡でできた地図、そこを辿っていけばミジメな世界が待っている。私の身体に横たわる地図はコラージュさ、縫い目だらけ!」そんな風にも歌っています。
表面的には陽気なオカマちゃんを演じるヘドウィグですが、自分を裏切ったトニーを許せないことや、股間の「アングリーインチ」へのこだわり、周囲の目など、本当の自分を取り戻すためには6インチあった頃のハンセルとは違う、のこりの1インチのヘドウィグを受け入れなければならないわけで、現実には悩みはつきません・・・・・。
物語もエンディングに近づく頃歌われるマドンナがほしがったといわれる楽曲「ミッドナイト・レディオ」では「息をしろ、愛を感じろ、自由を与えろ、魂でしれ、心臓から脳までの流れを君の血が知っているように・・・・・・パティにティナにヨーコにアレサにノナにニコにそして私に乾杯!イカレタロッカー達あなたたちは正しい、今夜はしっかり抱き合おう」と、まるで自分に語りかけるように歌いながら、派手なメイクもケバイコスチュームも脱ぎさり、本当の彼の姿にもどっていきます。しかし、いくら戻ろうにも、そこには6インチのハンセルはなく、1インチのヘドウィクが1インチのハンセルへと変わるだけという厳しい現実があります。でも「自分が自分自身に壁を持ちつづけていては本当のカケラは見つからない」といいたげな表情や、ヘドウィグでは許すことのできなかった様々ことも視点を変えて見れるようになり、これからは本当の自分で勝負!と決心はするものの、素の自分をさらけ出すことに、どこかおびえたような感じで裸のまま路地をあるいていく(そのように見えたので)ラストシーンがとても印象的でした。
とにかくロックミュージカルなので、通常のミュージカルとはまったく違い、辛口に言ってしまえばプロモーション風に見えてしまう部分もあるかもしれませんが、それゆえに、コテコテのミュージカルが嫌いな人でも、普通に楽しめると思います。ヘドウィグのように様々な運命のイタズラで大きなリスクを背負ってしまう事は人生において少なくないはずです。私を含め身体や心のシコリとなる「1インチ」は多かれ少なかれ誰でも持っているはず!自分の中に出来た絶対的な壁となる「1インチ」をどう請け入れるかできっと、自分自身の未来も変わってくるような気がしました。
ところで私の相方のカケラ君は今どこで何をしているのでしょう?もしかして、この人がカケラかもしれないと思えば少しは他人にやさしくできるようになるのでしょうか?自分のカケラどころか分身のような子供を平気で殺してしまう親が増えている今、自分のカケラ探しもいいですが、なんとも微妙ではあります・・・・・。
PS:ヘドウィグの夫役「イツハク」を演じるミリアム・ショアは映画ではヒゲ面のグランジファッションなのでわからないかもしれませんが正真正銘の女優さんです。その辺はラストでわかるので「ミッドナイト・レディオ」のシーンは要チェックです。そしてロック好きの方ならわかる小ネタで、ヘドウィグが初めてトニーと会ったとき、トミーがどんな音楽が好きだったかをヘドウィグが解説するシーンで「ボストン、カンサス、アメリカ、ヨーロッパ、エイジア〜さすがに世界中を旅するのは疲れた」と思わず笑ってしまします。 また、どうにかバンド活動をしたいヘドウィグが韓国人女性を集めて演奏するシーンも笑えます。特にエレキギターの女性が・・・。さらに「未来あるカート・コバーン」なるセリフもあったりしますし、デヴィッド・ボウイ、イギー・ポップ、ルー・リードなどの名前もでてくるあたり、スティーヴン・トラスクの趣味もてんこもりのようです。前にも触れた来日インタビュー時に監督は「日本版のヘドウィグなんかも見てみたいと思います。」とも言っておりましたが、2004年5月よりTOKYO・パルコ劇場にて三上博史のヘドウィグが舞台でみれるようです。
※オフ・ブロードウェイ?
タイムズ・スクエアを中心に、ブロードウェイ41丁目〜53丁目の38件の劇場で上演されるのがブロードウェイ演劇!ミュージカル公演がほとんどで、全てにおいて超一流どころが集まります。チケットはおおよそ50ドル〜90ドルです。ブロードウェイに対しオフ・ブロードウェイ演劇はというと、マンハッタン中に分散する約50件の小さな劇場で上演されるものをいいます。公演の内容もミュージカル〜コメディまで様々で、ブロードウェイスター達の修行の場ともいわています。チケットは約半分ぐらいの20ドル〜50ドル程度ですが、内容のほうは上記の〜ヘドウィグ〜のように楽しいものもたくさんあります。
監督・脚本・主演のジョン・キャメロン・ミッチェル
●ジョン・キャメロン・ミッチェル(監督・脚本・主演)
・1963年米国テキサス州生まれ。
・1986年「マイアミ5」で映画デビュー。
・1991年ブロードウェイの舞台「シークレット・ガーデン」にて
ドラマ・デスク賞にノミネート。
'・1993年オフブロードウェイの舞台「The Destiny of Me」にて
オビー賞を受賞。ドラマ・デスク賞にもノミネートされる。
・1994年ミュージカル「Hello Again」にて
ドラマ・デスク賞に2年連続3度目のノミネート。
'・1998年「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」にて
オビー賞、ニューヨーク・マガジン賞、ドラマ・リーグ賞、
アウター・クリティックス・サークル賞を受賞する。
●ヘドウィグ アンド アングリーインチ
・サンダンス映画祭
最優秀監督賞・最優秀観客ダブル受賞
・ベルリン国際映画祭
テディベア賞
・ドービル映画際
最優秀新人監督賞・最優秀評論家賞・グランプリ
'・サンフランシスコ国際映画祭
最優秀観客賞
・シアトル国際映画祭
最優秀主演男優賞
*** 時間があればこちらもどおぞ! ***
ロッキー・ホラー・ショウ/The Rocky Horror Picture Show
1975年/米 1時間39分 カラー
監督:ジム・シャーマン
製作総指揮:ルー・アドラー
制作:マイケル・ホワイト
撮影:ピーター・サシツキー
音楽監督・編曲:リチャード・ハートリー
脚本・作詞・作曲:リチャード・オブライエン
キャスト
(フランクリン博士) ティム・カリー
(ジャネット) スーザン・サランドン
(ブラッド) バリー・ボストウィック
(執事) リチャード・オブライエン
こちらは年配の映画ファン(失礼)なら1度は聞いた事がある名前ではないでしょうか?今やロックミュージカルの教典となった「ロッキー・ホラー・ショー」!世界初の参加型B級ホラーロックミュージカル?観た事がある!というのは別として(笑)、約30年たった今でも世界的にファンの多い(万人向けではないと思いますが)作品です。もともとロンドンの小さな劇場で公演されていたミュージカルがどんどん規模が大きくなっていった作品を映画化したもので、膨大な数のリピーターを中心に、当時から会場はお祭り騒ぎの仮装行列!超参加型ムービーとして観客達が映画と一緒に踊り・歌い・叫ぶ姿がフィルムを通して見ることができます。「トランシルヴァニア生まれのユニセックスよ!」などとKISSやランナウェイズも真っ青なメイク&コスチュームのかなり強烈なキャラクターが登場しますが、グラムロック全盛時代の作品なので、そちら方面がお好きな方は大体想像がつくと思います(笑)。しかし、作品に登場するキャラクターの個性、ファッションやセンス、ネタに至るまで、今でもそれらの手法が映画だけでなく、様々な形で使われいます。観た事がない!という方で興味のある方は「ロッキー ホラー ショウ」と検索してみてください。様々なコンテンツを見ることができます。中には出演者全員で踊る「タイム・ワープ」という曲の「ステップの解説」などもあったりします。さらに95年「デッドマン・ウォーキング」でアカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞したスーザン・サランドンの若かりし可愛い姿もタップリ見ることができます。・・・・・1970年代・・・・・・当時のことを考えると、現代とくらべても70年代はかなりブッ飛んだ方がおおかったような気がするのは私だけではないとおもいます。日本ではローリー寺西などが公演していましたっけ・・・。
PS:ロッキー・ホラー・ショウのビデオ・DVDをご観賞の際にはお子さんのいない時間帯にしましょうね(笑)。
投稿者 blogpawanavi : 2004年04月19日 20:18
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